騎乗の長所
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 23:38 UTC 版)
騎手時代に洋一のライバルと目されていた武邦彦は、洋一を評して「乗り役として必要な要素を何もかも備えていた」とし、なかでも優れていた点として「瞬間的な判断力」を挙げている。同期生の伊藤正徳は、この点についての具体的な例として、ハードバージで内埒沿いを突いて優勝した皐月賞を引き、「もしハードバージに他の騎手が乗っていたら、直線を向いた時、内を突くか外に出すか、右か左か迷ったろう。ほんの百分の数秒だろうけどね。洋一と、他の騎手の違いはその百分の数秒なんだ。でもレースではその差が大きく結果に現れる」と語っている。また常に前方を遮られることなくレースを運んだ秘訣について、「前が開いたから行くんじゃない。洋一の場合は(開くところを予期して)行ったところ、行ったところが開いていくんだ」と述べている。ライターの江面弘也は洋一と武邦彦を比較して、武については「静かに技を見せる『手品使い』」と評し、洋一については「大きな動きの中に驚きがあった『イリュージョニスト』だった」と評している。 岡部幸雄はその判断の性質について、洋一と同じく「天才」と呼ばれる武豊と比較している。岡部はレースにおける騎乗は減点法で考えるべきだとしたうえで、武は「ミスのない選択ができ」、洋一は「彼にしか考え出せないような選択肢を見つけ出していた」と対比しており、ともに直感的に正しい選択ができていた騎手だとしている。そのほか、調教師の境勝太郎は、名騎手の条件を「ペースの緩急を読む能力」としたうえで、「ぼくが必ず名騎手として挙げるのは、福永洋一です。福永は、1000mのレースでも、(ペースが)早いと思えば控える。3000mのレースでも、遅いと思えば行く。それがちゃんとできたジョッキーでした」と評している。また、同期の柴田政人は「騎手の技量」の要点として「最終コーナーまでいかに馬に楽をさせるか、そこからいかに馬を最後まで追い切るか」という二つを挙げ、「洋一はね、この二つが完璧にできたんです。努力もしたんだろうが、いわばもう生まれつきでできたんだわ。かないっこないよね」と述懐している。
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