震災後の補修工事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/30 16:17 UTC 版)
2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震において、閘門も損傷を受けた。特に裏閘門室(横利根川側)の左岸側壁に亀裂が発生し、亀裂幅は3月13日の時点で7ミリメートル、7月12日には20ミリメートルまで拡大した。亀裂発生個所は小門扉の開閉装置の下を通過しており、管理的な面でも重要な箇所であった。また、前回の補修工事から20年近くが経過しており、文化財保存の面でも大規模な補修が必要な時期にきていた。 国土交通省では、閘門の水抜き調査を実施したうえで、2013年(平成25年)1月に、学識者、自治体関係者を交えた横利根閘門保全対策検討委員会を設け、保全対策を議論した。そして2013年8月から2014年3月に補修工事が実施された。 調査の結果、亀裂の原因は液状化によって地盤が変動したためと推定された。そのため、浸透固化処理工法により、固化材を地中に注入する処置を施した。その際、事前に注入材の周辺環境への影響を確かめた。また文化財保護の観点から、注入した後でもふたたび注入前の状態に戻せることも事前に確かめたうえで実施された。 亀裂の補修については、煉瓦の張り替え等はせずに、セメント系補修材を注入することで対応した。補修個所は周りの煉瓦の色に合わせて顔料で着色する案も検討されたが、最終的には、補修跡も歴史の一部として残すこととした。また、他の煉瓦については、洗浄して綺麗にする意見と、そのままの状態を残す意見とがあったが、高温高圧洗浄機により、目地が痛まない程度に洗浄した。 開閉装置も亀裂により一部損傷を受けていた。開閉装置が壊れることは閘門の運用上問題となるので、今後の災害時にも対応できるよう、固定部に変位吸収機能を持たせた。この他、門扉の合わせ箇所に取り付けられた水密材も寿命だったため、建造時と同じくケヤキ材で取り替えた。 横利根閘門は、現在では漁船や釣り船、モーターボートなどが年1-2千隻利用する程度となっているが、今なお現役で動く閘門として使用されている。
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