雲外鏡―薔薇十字探偵の然疑
雲外鏡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/18 06:43 UTC 版)

雲外鏡(うんがいきょう) は、江戸時代の浮世絵師・鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』にある日本の妖怪の一つで、鏡の妖怪。
概要
石燕は、『百器徒然袋』(天明4/1784年刊)の「雲外鏡」を、悪戯そうに(舌を出した)顔をした丸鏡が、古木のような台に乗っかった[1]、立ち姿に描いている[注 1]。『百器徒然袋』解説文は、以下のとおり:
石燕も述べるように、照魔鏡とは、魔物の正体を明らかにするといわれている伝説上の鏡であるが[4][5]、のこりの文章は、「[石燕が]按ずるに、その妖魔の影が鏡に移り住んで、この鏡の妖怪が思うままに動けるようにさせたのではないか、そんなふうに夢ながらに思った」というような内容だと解釈されている[7]。
照魔鏡については、殷の紂王を堕落させた美女・妲己の正体を見破ったとされる内容が、明代の小説『封神演義』を日本語に翻案した『通俗列国志』にみつかる[8]。
『百器徒然袋』の雲外鏡は、その照魔鏡をもとにして石燕が創作した妖怪といわれており[9][10]、絵は化け物のような妖しい顔が浮かび上がった鏡の姿で描かれている[11](画像参照)。また、名称の雲外鏡は、多くの妖怪について記述された中国の地理書である『山海経』(せんがいきょう)の名に掛けたものとの説もある[12]。
昭和・平成以降
平成以後の妖怪関連の書籍では、百年を経た鏡が妖怪と化した付喪神(器物が化けた妖怪)であり、妖怪となった自分自身の顔を鏡面に映し出しているもの[11]、または照魔鏡に映された妖怪たちが照魔鏡を操って動かしているもの[12]、などと解釈され解説されることが多い。
妖怪漫画家・水木しげるの著書には、旧暦8月(葉月)の十五夜に月明かりのもとで水晶の盆に水を張り、その水で鏡面に怪物の姿を描くと、鏡の中にそれが棲みつくという伝説が記されている[13][14]。
狸の形状をしたもの
1968年の映画『妖怪大戦争』(大映)に登場している「雲外鏡」は狸の姿をした妖怪としてデザインされている。息を吸い込んで腹を大きくふくらませて様々な場所の様子をテレビのように映す能力をもっており、劇中でもその能力を使用している[15]。
昭和以降の児童向け妖怪図鑑では、雲外鏡は腹に鏡をつけた狸のような姿の妖怪であるとか、自らの体に様々なものを映し出すことができる、などと解説されることが少なくないが、妖怪探訪家・村上健司の指摘によれば、それらはこの映画における雲外鏡の影響下にあるものであるとしている[9]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b Davisson, Zack (2024). Ultimate Guide to Japanese Yokai: Ghosts, Demons, Monsters and other Creepy Creatures from Japan(with Over 250 Images). Tuttle Publishing. p. 88. ISBN 9781462924776 . "..on its wooden stand, peeking behind a curtain."
- ^ 稲田篤信、田中直日 編『鳥山石燕 画図百鬼夜行』高田衛監修、国書刊行会、1992年、312頁。 ISBN 978-4-336-03386-4。
- ^ a b 鳥山石燕「雲外鏡(うんがいきょう)」『江戸妖怪画大全(鳥山石燕 全妖怪画集・解説付き特別編集版)』江戸歴史ライブラリー、2021年 。
- ^ 諸橋轍次『大漢和辞典』7巻、「照魔鏡」大修館書店、1966年、7396頁
- ^ 江戸ライブラリー版では、この冒頭文のみしか現代語に抄訳していない[3]。
- ^ Toriyama, Sekien Hiroko Yoda訳 (2017), “Ungaikyō (Mirror beyond the clouds)”, Japandemonium Illustrated: The Yokai Encyclopedias of Toriyama Sekien, Courier Dover Publications, p. 290, ISBN 9780486818757
- ^ Yoda; Alt の共訳英訳 (2017年)による[6]。
- ^ 駒田信二「妖怪:九尾の狐」『中国』第98号、中国の会、1972年1月、76頁。
- ^ a b 村上健司編著『日本妖怪大事典』角川書店〈Kwai books〉、2005年、52頁。 ISBN 978-4-04-883926-6。
- ^ 田神健一、奥津圭介、中村亜津沙 編『アニメ版 ゲゲゲの鬼太郎 完全読本』講談社、2006年、51頁。 ISBN 978-4-06-213742-3。
- ^ a b 草野巧『幻想動物事典』新紀元社、1997年、49頁。 ISBN 978-4-88317-283-2。
- ^ a b 妖怪ドットコム『図説 妖怪辞典』幻冬舎コミックス、2008年、113頁。 ISBN 978-4-344-81486-8。
- ^ 水木しげる『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』講談社(講談社文庫)、2014年、115頁。 ISBN 978-4-062-77602-8。
- ^ 水木しげる『水木しげるの妖怪文庫』 2巻、河出書房新社〈河出文庫〉、1984年、145頁。 ISBN 978-4-309-47056-6。
- ^ 『甦れ!妖怪映画大集合』竹書房 (BAMBOO MOOK)、2005年、72頁。 ISBN 978-4-81242-265-6。
関連項目
雲外鏡(うんがいきょう)
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「夢幻スパイラル」の記事における「雲外鏡(うんがいきょう)」の解説
鈴鹿家にあった道具の一つ。妖の真の姿や人の記憶や未来を見せる鏡。この鏡によって弥生と温羅はまだ弥生が幼く、両親が存命だった時代に飛ばされることになる。
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