阿刺吉(あらき)
中近東、東アジア諸地域に共通した蒸留酒の総称。原料はヤシの樹液、根塊類、穀類など多岐にわたる。語原はアラビア話(a-raqアラク)で肉体の汗、壁の結露、ヤシの葉のひだなどから転じてミルク、酒、蒸留酒を意味する。中国元朝の書『飲膳正要』に「阿刺吉(あらき)酒」、同じく、『居家必用事類全集』では「阿里乞」と焼酎を称し、後者はその製法の中で熱せられた酒から立ちのぼる焼酎の蒸気を「汗」と呼んでいるところはアラクの意味をよく表現している。中国では製法とともに伝えられたアラビア名をうたったのであろう。わが国では、16世紀末の『南航日記残簡』に「勝酒」とあり、『徳川実記』によると焼酎の呼称は、琉球(りゅうきゅう)焼酒→焼酎→焼酒→泡盛酒と一七世紀を通じ変化しているが、一七世紀末の『本朝食鑑』で「志也宇知宇(しやうちう)、阿羅岐(あらき)、荒気(あらき)」、18世紀初めの『和漢三才図会』で「焼酎、火酒、阿剌吉酒」を同義語として扱うようになった。これらは16世紀末の中国書『本草綱目』に準じたものと思われるが、18世紀初めの書『巻懐食鏡』に「近世阿蘭陀(オランダ)国より来る阿剌木…」とみえ、オランダ船が東南アジアからわが国にもたらしたアラックも当時知られていた。東南アジアに現存するアラックにはココヤシ、ニッパヤシ、ブリヤシなどの花序を切って集めた樹液を発酵、蒸留したもの(ニッパワインなど)や、コメやキャッサバ(和名イモノキ。別名マオニク。芋からタピオカと呼ぶデンプンをとる。)などを餅麹(もちこうじ)で糖化、発酵、蒸留したものなどがある。
- 阿刺吉のページへのリンク