長期増強の発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/08 13:37 UTC 版)
長期増強はテリエ・レモにより1966年にノルウェーのオスロにあるペール・アンデルセン(英語版)の研究室で初めて発見された。レモは麻酔下のウサギの短期記憶における海馬の役割に関する電気生理学実験を行っている所であった。 海馬の有孔質路と歯状回の 2 つの部分の神経結合を取り出し、レモは有孔質路の刺激によって生じる歯状回の電気生理学的変化を観察した。レモの予想通り、シナプス前線維である有孔質路線維の単一パルス刺激を行うと、歯状回のシナプス後細胞集団に興奮性シナプス後電位 (EPSP : excitatory postsynaptic potential) が起きた。しかしレモが予想もしなかったことに、シナプス後線維に高頻度刺激を行うと、上で示したようなシナプス後細胞集団の単一パルス刺激に対する応答が長期に渡って向上した。このような高頻度刺激を行った後の、単一パルス刺激に対するシナプス後細胞集団の興奮性シナプス後電位は強く、持続性のあるものであった。高頻度刺激によってシナプス後細胞集団の単一パルス刺激に対する応答性が長期に渡って向上するこの現象は、初めは "long-lasting potentiation" と呼ばれていた。 アンデルセンの研究室に1968年に加わったティモシー・ブリス(英語版)は、レモと共同で1973年にウサギの海馬における "long-lasting potentiation" の特徴を初めて述べた論文を発表した。さらに、ブリスとトニー・ガードナー・メドウィン (Tony Gardner-Medwin) は覚醒時の動物においてブリスとレモが発表したのと同様な "long-lasting potentiation" が起きるとする論文を発表した。1975年に、ダグラス (Douglas) とゴダール (Goddard) はそれまで "long-lasting potentiation" と呼ばれていた現象を『長期増強 ("long-term potentiation") 』と呼ぶことを提唱したアンダーソンは "long-term potentiation" の頭字語である "LTP" が発音しやすいことから、"long-term potentiation" という呼称を論文の著者達に勧めたとされている。
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