銷釈真空宝巻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:55 UTC 版)
宝巻とは、明代から清代にかけて、口唱芸能として発展した西遊記などの物語が、民間宗教と結びついて経典の体裁をとったものである。清の嘉慶年間(1796年 - 1820年)頃には白蓮教徒のような反体制的な宗教団体の紐帯となることを恐れた清朝政府が禁圧し、廃棄させたため、それ以前の宝巻が残っている例は少ない。『銷釈真空宝巻』(以下、『真空宝巻』)は20世紀になって発見された史料で、中華民国時代の1929年、北平図書館が寧夏の廃墟から出土した宋元刊西夏文蔵経を購入した際に、その中の漢籍に含まれていた。宝巻文中に孔子を指して「大成至聖文宣王」と称している箇所があり、孔子が国家によってこの称号を与えられたのは元の大徳11年(1307年)。「至聖先師」と改められるのが明の嘉靖9年(1530年)であるため、その間の成立とみられる。巻首が欠損しており、588行だけ残存しているが、そのうち28行目から56行目まで西遊記のごく短いあらすじが、おそらくストーリー順にまとまって記されている。これにより元末(ないし明初)における西遊記物語の梗概を知ることができる。大鬧天宮や江流和尚などの西天取経より前の部分は見られず、孫行者・猪八界・沙和尚の顔ぶれは『朴通事諺解』と同じだが、「八戒」ではなく「八界」に作る(同音異字の混用と思われる)。また『朴通事諺解』には見られない羅刹女・牛魔王・兜卒天・弥勒仏、滅法国・女児国などの固有名詞が現れている。
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