金正恩 (北朝鮮の人物)とは? わかりやすく解説

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金正恩 (北朝鮮の人物)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2010/12/11 21:31 UTC 版)

北朝鮮の政治家
金正恩
김 정은
生年月日 1983年1月8日(27歳)
出生地 北朝鮮平壌
所属政党 朝鮮労働党
称号 朝鮮人民軍大将
親族 金正日(父)
金正恩
各種表記
チョソングル 김정은
漢字 金正恩
片仮名
(現地語読み仮名)
キム・ジョンウン
ラテン文字転写 Kim Chŏng'ŭn
英語表記 Kim Jong-un
  

金 正恩(キム・ジョンウン、김 정은1983年1月8日[1] - )は、朝鮮人民軍大将、朝鮮労働党中央委員会委員、朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長。 党内序列第5位[2]朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の最高指導者金正日の後継者として有力視される人物でもある。

目次

概要

金正日の三男で、母は在日朝鮮人高英姫。異母兄に金正男(長男)、同母兄に金正哲(次男)、同母妹に金ヨジュンがいる。

従来、名前の漢字表記は金正 (김정운) 、金正 (김정은) とされていた。#名前について参照。

来歴

スイスのベルン国際学校にパク・ウンという偽名で北朝鮮大使館から通っていたと言われている[3]。よって、フランス語が堪能で、その他中国語ロシア語ドイツ語英語[4]も理解すると言われている。日本語に関しては、理解できるかは不明だが、漢字の書き取りをしていることはわかっている[5]

1992年頃に日本を訪れ、母親・北朝鮮当局者と共に東京ディズニーランドへ行ったという証言もある[6]

公式なことは不明であるが、「国防委員長代行」という職位に就いているという複数の証言があった[7]

北朝鮮では最高指導者の地位が金日成から実子・金正日に世襲された経験があるため、日本大韓民国などのメディアでは金正日の後も指導者の地位が世襲されると前提にした報道が多い。そのため、日韓のメディアにおいては金正日の後継者が誰なのかがしばしば話題にされており、三男である金正恩の名前も挙げられることがある。

NGO「国際人権協会」のフィリップ・ホーによれば、金正恩がスイスで通っていたのはローザンヌ大学であるとし、2008年8月15日に北朝鮮に帰国した金正恩が、平壌市内をハーレー・ダビットソンで走行中に交通事故を起こし、再起不能の重症に陥ったと主張している[8][9]

後継者指名を伺わせる具体的な動き

2009年1月15日、金正日が金正恩を後継者として指名したとの報道が韓国の聯合ニュースによってなされた[10][11]

2009年2月15日、韓国の聯合ニュースの報道によれば、金正日の健康が悪化した際、義弟の張成沢が金正日に金正恩を後継者にするよう働きかけたという[12]

2009年6月2日、韓国の東亜日報5月25日核実験後に、金正恩が後継者に選ばれたことを在外公館に通知した事実が確認されたと報じた[13]

2010年2月17日、韓国の自由北朝鮮放送が、北朝鮮当局が全国のジョンウンを名乗る人物に対し改名を強要した、と伝えた。金正日が後継者に決まる際にも同じようにジョンイル名の者に対して強制改名が行われている [14]

2010年9月21日、韓国の環球時報やコリアタイムズは、金正恩ではなく、金正日の妹にあたる金敬姫が最有力候補と報じた[15]

2010年9月27日朝鮮中央放送が、金正日が10月10日付で金正恩ら6人を朝鮮人民軍の大将に昇進させる命令を発したと報道[16]。また翌9月28日に開催された朝鮮労働党代表者会において党中央委員に選出され、同日に開かれた党中央委員会総会で党中央軍事委員会副委員長に選出されたと報じた[17]。これらの動きにより金正日の後継者としての地位が確定したとみなされている[18]

2010年10月10日に朝鮮労働党創建65周年を記念した軍事パレードが平壌で行われ、父・正日と共に観閲した[19]

写真

金一家の息子の存在およびそれを証明する写真は、特に北朝鮮国内では最高機密とされ、出回ることがなかったが、2009年1月16日のニュース番組「NEWS ZERO」(日本テレビ系)で、10歳の頃の正恩の写真が公開された。金正日の元専属料理人の藤本健二は金正恩の18歳当時の顔立ちはプロゴルファーの片山晋呉にそっくりであると証言している[20]。その後2009年6月頃から、JNN読売新聞がスイスのインターナショナルスクール時代(10代半ば)の金正恩の写真を公開して大きな話題になった。なお、JNNが入手した写真は、2010年6月8日に韓国の聯合ニュースが未公開写真を入手したと報じている[21]

上述の10歳のときの顔写真から26歳の顔を推定した合成写真がアメリカの公開情報センターによって作成されるなど、謎に包まれた存在であった[22]2010年4月20日毎日新聞に金正恩の近影とされるものが掲載されたが、実際には全くの別人であった事が後に判明した[23]

2010年9月9日香港衛星テレビ局、鳳凰衛視(香港PHX)の番組「時事弁論会」で「北朝鮮は中国の負担になっているか?」というテーマの回が放映された際、同年8月末に父親・金正日と一緒に訪中した事実とともに、その際の写真が放映された[24]。それによると顔は父親似であるが祖父である金日成の面影もあり(ただし、金日成に似せて整形をしたという一部報道もある)、身長は金正日より頭一つ分位高い。番組内でも「中々格好良い方ですね」と紹介された。

2010年9月30日、金正恩とみられる人物が写っている写真と映像を北朝鮮メディアが初公開した[25][26]

金正恩とみられる人物のスイス留学時代の写真を紹介する際、民放各局では、ニュース系列のロゴマークを入れて報道していた。

正恩も姿を見せた2010年10月10日の軍事パレードは海外メディアにも取材が認められ、正恩の映像が西側諸国のカメラによってはじめて撮影された[19]

人物

身長180cm前後とする報道があったが、前述の藤本健二は160 - 165cmくらいだと証言している[27]。スポーツ好きで分野を問わず全般的にこなす。特にバスケットボールを好み、専用の体育館があるほど。どんな遊びの試合であっても終了後には必ず反省会を行い自分と一緒のチームになった人にアドバイスを送ることを忘れない、という彼の人柄を表すエピソードが聞かれる[20]。温厚でクラスメートからの人望が厚かったという証言もある。

007シリーズの映画が好きだとも言われている。またスイスのインターナショナルスクール時代のクラスメートの証言によれば、日本やアメリカの漫画が好きでよく読んでいたという。さらに正恩とクラスメートが描いたバッグス・バニーのイラストが残されている。

藤本健二は、金正日が北朝鮮の最高幹部が集まった席で「(次男の)正哲は(自分と違って)ハートが弱くて気が小さくダメな奴だ。しかし、正恩は何故か私によく似ている」といい、正恩を褒め称える姿を何度も目撃したという[28]。また、「小さな大将同志」と呼んだところ「俺は幼稚園児か」と激怒したため、それからは「大将同志」と呼んでいたとも証言している[1]

母が早くに亡くなったため、育て上げたのは横田めぐみとの説がある[29]

名前について

金正日の三男の名前については、同氏の専属料理人を務めていた日本人・藤本健二により「キム・ジョンウン」と紹介された。その漢字等表記として当初、金正김정, Kim Jeong-un)が当てられた。しかしハングルの "" と "" は日本語では区別できず双方ともに「ウン」である。その後正しいハングル表記は「김정」(Kim Jeong-eun)ではないかという説が浮上した[30]

その場合、漢字表記は金正もしくは金正ではないかと推測されており[31]、2009年10月7日には韓国の統一部がハングル表記を変更すると発表した[32]。これを受け、朝日新聞[33]東京新聞[34]読売新聞[35]は、表記を「金ジョンウン」に変更すると発表した。

また、毎日新聞は、北朝鮮関係者の多くが適切と証言しているとして、「金正銀」という表記を採用していた[36]。韓国でも「誕生日の2009年1月8日前後に金正雲から金正銀に改名した」と報じるメディアがあり[37]、2010年9月28日には中国の新華社通信中国中央電視台金正銀の表記を使用している[38]。ただし、北朝鮮は中国政府に正式な漢字表記を伝えていないという報道もある[39]

一部のメディアでは Kim Jong-woong のスペル表記の可能性を示唆している[40]

2010年10月1日朝鮮中央通信により、ジョンウン氏の漢字表記を「正恩」とすると発表された[41]

脚注

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  1. ^ a b 2009年7月2日放送『NNN Newsリアルタイム』より。なお、1984年生まれとする説もある。
  2. ^ “ジョンウン氏の写真を初公開”. NHKニュース. (2010-9-30). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100930/k10014298391000.html 2010-9-30閲覧。 
  3. ^ 「金正雲は日本の漫画好き、韓国の学生とも親しく」 中央日報 2009.06.08
  4. ^ 金正雲氏:写真を入手 10代のスイス留学当時 毎日新聞 2009年6月14日
  5. ^ 2010年9月28日のNHKニュースウオッチ9』での藤本健二の証言より(彼が漢字の書き取りをしていたことを驚いたと話している)。なお、北朝鮮におけるハングルでは、漢字を使用してしない(漢字復活#北朝鮮参照)。
  6. ^ 金正恩氏に訪日歴、92年頃母とTDLに? 2010年10月11日 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
  7. ^ “北朝鮮:正恩氏「国防委員長代行」に 最高ポストを補佐”. 毎日新聞. (2009年6月20日). http://mainichi.jp/select/world/news/20090620k0000e030060000c.html 2009年6月20日閲覧。 
  8. ^ 月刊『WILL』2008年11月号 『心筋梗塞で再起不能 「金正日後」の極秘情報』より。
  9. ^ ただし、藤本健二はこの証言を隔週刊雑誌『SAPIO』の中で否定している。
  10. ^ 金正日総書記が三男を後継者に決定、党に指令=報道 (日本語). REUTERS (2009年1月15日). 2009年1月16日閲覧。
  11. ^ 金総書記後継に三男・正雲氏決定か、情報筋伝える (日本語). 聯合ニュース (2009年1月15日). 2009年1月16日閲覧。
  12. ^ 金総書記義弟が決定的影響=後継体制で「摂政」に (日本語). 聯合ニュース (2009年2月25日). 2009年6月6日閲覧。
  13. ^ 北、三男・金ジョンウン氏を後継者指名か 韓国政府が議員に伝える (日本語). MSN産経ニュース (2009年6月6日). 2009年6月6日閲覧。
  14. ^ 北朝鮮、「ジョンウン」という名の国民に改名を強要 (日本語). サーチナ (2010年2月18日). 2010年9月29日閲覧。
  15. ^ 金正日の後継者、総書記の「妹」が最有力か=韓国メディア
  16. ^ “金ジョンウン氏に大将の称号 金正日総書記が発令” (日本語). 朝日新聞. (2010年9月28日). http://www.asahi.com/international/update/0928/TKY201009270404.html 2010年9月28日閲覧。 
  17. ^ “金ジョンウン氏、党中央委員に選出” (日本語). 読売新聞. (2010年9月29日). http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100929-OYT1T00141.htm 2010年9月29日閲覧。 
  18. ^ “「後継」ジョンウン氏が本格始動” (日本語). 読売新聞. (2010年9月29日). http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100929-OYT1T01069.htm 2010年9月30日閲覧。 
  19. ^ a b “金正恩氏、北朝鮮の軍パレード観閲” (日本語). AFPBB News (フランス通信社). (2010年10月10日). http://www.afpbb.com/article/politics/2765317/6313661 2010年10月11日閲覧。 
  20. ^ a b 2009年6月3日放送回『情報ライブ ミヤネ屋』ゲスト出演時より
  21. ^ “ジョンウン氏10代の写真”. 時事ドットコム (時事通信社). http://www.jiji.com/jc/v2?id=20100608north_korea_vol5_01 
  22. ^ “金正雲氏、26歳の顔?…米機関が合成写真”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2009年7月25日). http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090725-OYT1T00485.htm 2009年7月25日閲覧。 
  23. ^ “北朝鮮:正銀氏、初の近影…金正日総書記と製鉄所視察”. 毎日新聞. (2010-4-20). http://mainichi.jp/select/world/northkorea/news/20100420k0000m030108000c.html 2010-5-23閲覧。 
  24. ^ 日本では2010年9月9日NHK-BS1アジアクロスロードで放映
  25. ^ “朝鮮中央通信がジョンウン大将とみられる写真を配信”. MSN産経ニュース. (2010-9-30). http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100930/kor1009301455003-n1.htm 2010-9-30閲覧。 
  26. ^ “キム・ジョンウン氏 映像を公開”. NHKニュース. (2010-9-30). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100930/t10014303621000.html 2010-9-30閲覧。 
  27. ^ 2010年9月30日放送回『スーパーニュース』(フジテレビ)出演時に発言。
  28. ^ 2009年6月10日放送回『情報ライブ ミヤネ屋』より
  29. ^ 中丸薫『いよいよ2012年 さあ、こんな世の中にしよう』 徳間書店 2009年
  30. ^ 金正日三子名字经证实是“正银(中国語) 明報 (2009-09-25) 2009-10-07 閲覧 において김정은 (Kim Jeong-eun) と書かれた宣伝ポスターの写真が根拠として引用されている。
  31. ^ “金総書記三男の名前は「正雲」じゃなかった!?”. 朝鮮日報. (2009年9月12日). http://www.chosunonline.com/news/20090912000013 2009年9月12日閲覧。 
  32. ^ “金総書記三男のハングル表記変更=「正雲」とは異なる-韓国政府”. 共同通信. (2009年10月7日). http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009100700348 2009年10月7日閲覧。 
  33. ^金総書記の三男は「ジョンウン」氏 漢字表記分からず」 asahi.com、2009年10月8日。
  34. ^金総書記三男の表記変更 金正雲→金ジョンウン」 TOKYO Web、2009年10月8日朝刊。
  35. ^韓国統一省、金総書記三男の名前表記を変更」 YOMIURI ONLINE、2009年10月7日。
  36. ^ 北朝鮮:金総書記に三男同行 初の公式文書 毎日jp、2009年11月29日
  37. ^ “後継者問題:金正雲から金正銀に改名か” (日本語). 朝鮮日報. (2010年7月3日). http://www.chosunonline.com/news/20100703000020 2010年7月3日閲覧。 
  38. ^ “ジョンウン氏の表記は「金正銀」…新華社通信” (日本語). 読売新聞. (2010年9月28日). http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100928-OYT1T00356.htm 2010年9月28日閲覧。 
  39. ^ “ジョンウン氏の大将任命、中国・新華社が報道” (日本語). 日本経済新聞. (2010年9月28日). http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE0EAE2E0978DE0EAE2EBE0E2E3E29C9CE2E2E2E2;at=ALL 2010年9月29日閲覧。 
  40. ^ GlobalSecurity.org
  41. ^ 金ジョンウン氏は「正恩」 後継者の漢字表記判明 - 共同通信



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