金の子牛の正体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/05 08:47 UTC 版)
旧約聖書・民数記に神を牛の角に例える部分があること等から、この金の子牛はユダヤ・キリスト教の唯一神であるヤハウェの偶像だったと考えられている。即ち、金の子牛崇拝は異教の神を崇めるのであり、偶像の姿で表されたヤハウェの偶像を崇めることだったのである。牡牛を崇拝する信仰自体は古代世界では決して珍しいものではなく、例えばメンフィスでは豊穣の神、聖牛アピスを守護神として奉っていた。サカーラにある王家の墓では、地下に埋葬された石棺の中から防腐処置を施された約60頭もの雄牛が発見されている。その各々が生神として扮せられており、傍らには双子の処女が殉葬されていた。また、牡牛はフェニキアのエール神やハダド神のシンボルでもある。 一般的な解説では、金の子牛が作られた理由にモーセの帰還が遅れたことを挙げるのだが、これは裏返せば、イスラエルの民衆がかねてより認識可能な民族の象徴、すなわち実体のある神を望んでいたことを意味している。モーセが示した実体のない神という新しい概念は、エジプトで生まれ育ち、エジプトでの宗教を体験した彼らにとっての神という概念に対して隔世の感があったに違いない。一説によれば、『出エジプト記』の幕屋建設に関する指示は、金の子牛の事件の反省から、より実体性のある信仰を民衆に与えざるを得なくなったからだとしている。
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