重力波検出からの制約
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/06 07:22 UTC 版)
「原始ブラックホール」の記事における「重力波検出からの制約」の解説
2016年3月、LIGOおよびVirgoによって2つの30太陽質量ブラックホール (およそ6×1031 kg) 合体の際に放出された重力波の検出が報告された1ヶ月後、3つの研究者グループが独立して、検出されたブラックホールは原始ブラックホール起源であるとする説を提唱した。そのうち2つのグループは、LIGOによって示唆されたブラックホールの合体頻度は、もし原始ブラックホールの無視できない割合が矮小楕円体銀河や球状星団などのようにハローにある程度集まっている場合、全てのダークマターが原始ブラックホールからなっているとするシナリオと矛盾しないものであるとした。これは一般的な宇宙の構造形成理論から期待される結果である。残りの1グループは、観測されたブラックホールの合体頻度は原始ブラックホールがダークマターの全てを占めるとするシナリオとは一致せず、原始ブラックホールのダークマター全体への寄与は1%未満に過ぎないと主張した。LIGO によって検出されたブラックホールの質量が予想外に重かったことから、太陽質量の1から100倍の範囲の質量を持つ原始ブラックホールへの関心が強く呼び起こされることとなった。しかし、星のマイクロレンズ現象が検出されないこと、宇宙マイクロ波背景放射の非等方性、暗い矮小銀河の大きさ、銀河中心方向におけるX線天体と電波天体との相関が見られないことなど、この質量範囲の原始ブラックホールが観測によって否定されるかどうかについては未だに議論が続いている。 2016年5月、Alexander Kashlinsky は、もし原始ブラックホールの存在度がダークマターと同程度であった場合、分解されていないガンマ線とX線背景放射において観測された空間相関は、同程度の質量を持った原始ブラックホールによるものだと解釈できることを示唆した。 しかし2019年4月には、原始ブラックホールがダークマターの主成分であるという仮説が難局に直面することを示唆する研究が発表された。国際研究チームがスティーヴン・ホーキングによって提唱された理論についてこれまでで最も厳密な検証を行い、0.1 mm よりも小さい原始ブラックホールがダークマターの大部分を占める可能性を否定する結果が得られた。
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