進化の記録
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 09:06 UTC 版)
RuBisCOに対して同じ効果を及ぼす上記2種類の経路は、何回も独立に進化した。実際、C4型光合成は18の異なった科で現れている。C4構造は特にイネ科植物の一部で使用されているのが有名である。一方、CAM型光合成は、多くの多肉植物やサボテンで使用されている。この能力は、3200万-2500万年前の漸新世に獲得されたようである。しかし、700万-600万年前の中新世まで、生態学的に重要なものにはならなかった。炭化化石の中に、Kranz構造の維管束鞘組織が保存されているものがいくつかあり、その時代明らかにC4代謝が存在していたと考えられる。また 同位体によってこれらの割合などを推測することがある。大気中に存在する炭素の同位体のうち、C3植物は、より同化されやすい12Cを多く使う。C4植物では化学的な段階がさらに多いので、この効果が高められる。13Cと12Cの重量比を求めることで、植物体を分析できる。この比をδ13Cと表す。C3植物の場合は、空気中の比より平均して約14‰(パーミル)少ない。一方、C4植物の場合は約28‰少ない。またCAM型光合成植物のδ13Cは、夜と昼との炭素固定量の比によって変わる。昼に炭素を固定した量が多ければC3植物の値と近くなるし、夜に多ければC4植物と近くなる。 分析のために、草の化石資料を十分な量集めることは難しい。しかし幸いなことに代替品がある。馬である。馬は、問題の期間中全世界的に棲息し、ほぼ草のみを食べていた。同位体古生物学では「食べた方と食べられた方はだいたい同じ」という諺がある。つまり、(多少の補正は必要だが)動物体は食物の同位体比を反映するということである。馬の歯の良い記録が全世界的に存在しており、そのδ13Cが測定されている。この記録からは、700~600万年前の中新世メッシニアンのころに、値の急な減少が示された。これはC4植物が全世界的に繁栄したと解釈される。
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