近衛部隊と儀仗任務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 20:37 UTC 版)
イギリス陸軍は古くからの伝統の多くを現代にも引き継いでおり、そのなかでもとくにロンドンにおいて近衛部隊等のおこなう衛兵の交代式や騎兵の行進などの各種式典は、ロンドン観光の目玉の一つとしてイギリス国外においても有名である。この式典の多くは近衛部隊によっておこなわれており、これらの近衛部隊を統括する管理部隊として王室師団(Household Division)が置かれている。管理上この師団(名称は師団だが戦闘部隊としての師団とは異なる)に属するものがいわゆる近衛部隊である。 王室師団に属するのは、王室騎兵のライフガーズおよびブルーズ・アンド・ロイヤルズと近衛歩兵(Foot Guards)、すなわちグレナディアガーズ(Grenadier Guards)・コールドストリームガーズ(Coldstream Guards)・スコッツガーズ(Scots Guards)・アイリッシュガーズ (Irish Guards)・ウェルシュガーズ(Welsh Guards)の5個連隊である。また、近衛歩兵は近衛師団(Guards Division)の管理下にもあり、近衛師団には予備役部隊である国防義勇軍(Territorial Army(TA))のロンドン連隊(London Regiment)も加えられる。 王室師団は基本的に管理部隊であり、実際の儀仗任務の運用はロンドン管区(London District)が行なっている。ロンドン管区とはイギリス陸軍の制度における軍管区の一つで師団相当格の組織であり、ロンドンの防衛を目的とする組織で、自動車道25号線(M25)の内側をその防衛管区とし、そこに属する部隊はほかのいずれの司令部にも属さないこととなっている。指揮官(少将(Major General))は王室師団長が兼任し、その麾下に王室部隊(Household Troops)が編成される。王室部隊には王室師団の他に王立騎馬砲兵(Royal Horse Artillery)の王立騎馬砲兵・国王中隊(King's Troop, Royal Horse Artillery)が加わる。 実際の儀仗任務はこのロンドン管区に所属する部隊によっておこなわれるが、ロンドン管区にはすべての近衛部隊が所属するわけでもなく、また近衛部隊以外の部隊が所属しないわけでもない。ロンドン管区に所属する連隊は、具体的には王室騎兵のうち王室騎兵乗馬連隊、王立騎馬砲兵・国王中隊、各連隊に付属する軍楽隊、そしていわゆるパブリック・デューティーによってロンドン管区に配属される各歩兵大隊である。パブリック・デューティーとは、近衛歩兵あるいは戦列歩兵に所属する大隊から、ロンドンの警備部隊を抽出する古くからの制度で、現代においては5個の近衛歩兵連隊に所属する5個大隊から2個大隊が、戦列歩兵連隊からは1個大隊がローテーションでこの任務にあたり、またこのほかグレナディアガーズ・コールドストリームガーズ・スコッツガーズに所属する近衛増強中隊の3個中隊がローテーションしない恒常的なものとして、その任務にあたっている。なお、1994年の陸軍再編の時点で、かつての中隊単位での抽出は廃止され、現在の大隊単位の制度へ移行している。 現在進行中の2008年までの完了を目処とする陸軍の再編後は、現在のローテーション制度が廃止され近衛歩兵の2個大隊と戦列歩兵の1個大隊が近衛増強中隊のような恒常的な儀仗任務につくこととなっている。ただしこの改革については反対もある。(近衛兵 (イギリス)も参照。)
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