近衛首相の決意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:58 UTC 版)
8月4日、近衛首相は日米首脳会談の決意を東條陸相、及川古志郎海相に告げた。及川は全面的賛成を表明し、東條は会談がまとまらなかった場合にも内閣を放り出さないこと、対米戦の決意をもって臨むことを条件に賛同した。近衛の意図は、昭和天皇から全権を委任されて、ルーズベルト大統領と直談判し、軍部を通り越して直接天皇の裁可を仰ぐことで事態を解決することだったとされる 。 8月7日、近衛は昭和天皇から首脳会談を速やかに取り運ぶようとの督促を受け、野村大使に宛て「(日米国交の)危険なる状態を打破する唯一の途は此の際日米責任者直接会見し互いに真意を披露し以て時局救済の可能性を検討するにありと信ず」として、ルーズベルト大統領との首脳会談を提案するよう訓電した。首脳会談の申し入れは野村からハル国務長官に行われたが(ルーズベルト大統領はウィンストン・チャーチル英首相との大西洋会談に出かけていたため不在)、ハルの返事は曖昧であった。 8月17日、大西洋会談から戻ったルーズベルトは野村に対日警告を読み上げた。 「もし日本政府が武力ないし武力の威嚇によって隣接諸国を軍事的に支配しようとする政策または計画にしたがい、今後なんらかの手段をとるならば、米政府は、アメリカおよび米国民の正当なる権利と利益を保護し、アメリカの安全を保障するために必要と思われる一切の手段を、直ちにとらざるをえないであろう」 その一方で、ルーズベルトは首脳会談の提案には好意的で、ホノルルに行くのは無理だが、ジュノーではどうかと返事をした。 8月26日、大本営政府連絡会議の可決を経て、近衛は「先ず両首脳直接会見して必ずしも従来の事務的商議に拘泥することなく大所高所より日米両国間に存在する太平洋全般に亙る重要問題を討議し、時局救済の可能性ありや否やを検討することが喫緊の必要事にして細目の如きは首脳会談後必要に応じ主務当局に交渉せしめて可なり」との「近衛メッセージ」を発出した。28日に野村から「近衛メッセージ」を手交されたルーズベルトはこれを大いに賞賛し、3日ほど会談しようと述べた。しかし、同夜に行われた野村とハルの会談において、ハルは首脳会談で話がまとまらなければ真に憂慮する結果を来すとして、あらかじめ大体の話をまとめてから首脳会談で最終的に決定する形式にしたいとの意向を示した。
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