警備隊区とは? わかりやすく解説

警備隊区

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/24 07:31 UTC 版)

警備隊区(けいびたいく)は、1888年(明治21年)から1920年(大正9年)まで、大日本帝国陸軍が設けた管区の類型の一つである。主な離島防衛のため、対馬小笠原佐渡隠岐大島五島沖縄の警備隊管轄地(予定地)に設定された。区域内の徴兵召集に関する事務、区域内に所在する予備後備将校及び相当官の異動等届出[1]などを所掌した。各警備隊区の名称は地名を冠した名称で、対馬のみ警備隊区司令部を有した。

沿革

1886年(明治19年)12月1日、「警備隊条例」が公布され、まず対馬警備隊が設置され、順次、小笠原、佐渡、隠岐、大島、沖縄に警備隊を設けることとなった[2]1888年(明治21年)5月14日に公布された「陸軍管区表」(明治21年勅令第32号)により、各警備隊所在地(予定地、五島を含む)に警備隊区が設置された。しかし、対馬警備隊以外の警備隊は沖縄を除いて設置されず、警備隊未設置の警備隊区の業務は関係大隊区が担った(「陸軍管区表」備考)。

1889年(明治22年)12月30日に公布された 「警備隊区司令部条例」(明治22年勅令第142号)により対馬警備隊区司令部が設置され、対馬警備隊区司令官は警備隊司令官が兼務した。

1896年(明治29年)4月1日、「警備隊司令部条例」(明治29年3月26日勅令第55号)により対馬警備隊区司令部が廃止され、その業務を対馬警備隊司令部が引継いだ。

1898年(明治31年)4月1日、沖縄警備隊司令部は「沖縄警備隊司令部条例」(明治31年3月8日勅令第36号)により設置され、警備隊区の業務を担った。

1903年(明治36年)5月1日、対馬警備隊司令部は「対馬警備隊司令部条例」(明治36年4月15日勅令第80号)により設置となり、引き続き警備隊区の業務を担った。

1907年(明治40年)10月1日、陸軍管区表が改正(明治40年9月17日軍令陸第3号)され、小笠原島、佐渡、隠岐、大島、五島の各警備隊区が廃止された。

1918年(大正7年)6月1日、沖縄警備隊が廃止(大正7年5月29日軍令陸第15号)され、同日、沖縄連隊区が陸軍管区表の改正(大正7年5月29日軍令陸第16号)により設置された。

1920年(大正9年)8月9日、対馬警備隊が廃止(大正9年8月7日軍令陸第8号)となり、同年8月10日に陸軍管区表から警備隊区の欄も除かれ(大正9年8月7日軍令陸第10号)、警備隊区は廃止された。

各警備隊区の概要

対馬警備隊区

1888年5月に設置され、「陸軍管区表」(明治21年勅令第32号)により第6師管第12旅管に属し、次のとおり管轄区域が定められ、その区域は廃止となるまで変更はなかった。

上県郡下県郡

所属の師管及び旅管は次のように変遷した。

  • 1896年4月1日 第6師管(旅管廃止。改正「陸軍管区表」明治29年勅令第24号)
  • 1903年2月14日 第12師管(改正「陸軍管区表」明治36年勅令第13号)

1920年に廃止となり、その旧管轄区域は陸軍管区表の改正(大正9年軍令陸第10号)により福岡連隊区に編入された。

沖縄警備隊区

小笠原島警備隊区

1888年5月に設置され、「陸軍管区表」(明治21年勅令第32号)により第1師管第1旅管に属し、次のとおり管轄区域が定められ、その区域は廃止となるまで変更はなかった。

小笠原島

小笠原島警備隊は設置されず、警備隊区の業務は麻布大隊区が担当し(「陸軍管区表」欄外記載事項、明治21年勅令第32号)、1896年4月1日に大隊区が連隊区となった以降は、麻布連隊区が業務を担った(改正「陸軍管区表」備考1、明治29年勅令第24号)。

所属の師管及び旅管は次のように変遷した。

  • 1896年4月1日 第1師管(旅管廃止。改正「陸軍管区表」明治29年勅令第24号)
  • 1903年2月14日 第1師管第1旅管(旅管復活。改正「陸軍管区表」明治36年勅令第13号)

1907年に廃止となり、その旧管轄区域は陸軍管区表の改正(明治40年軍令陸第3号)により麻布連隊区に編入された。

佐渡警備隊区

1888年5月に設置され、「陸軍管区表」(明治21年勅令第32号)により第2師管第3旅管に属し、次のとおり管轄区域が定められた。その後、の統合により1897年4月1日、管轄区域は佐渡郡のみとなった(改正「陸軍管区表」明治29年勅令第381号)。

  • 新潟県
雑太郡羽茂郡加茂郡

佐渡警備隊は設置されず、警備隊区の業務は柏崎大隊区が担当し(「陸軍管区表」欄外記載事項、明治21年勅令第32号)、1896年4月1日に大隊区が連隊区となった以降は、柏崎連隊区が業務を担った(改正「陸軍管区表」備考1、明治29年勅令第24号)。

所属の師管及び旅管は次のように変遷した。

  • 1896年4月1日 第2師管(旅管廃止。改正「陸軍管区表」明治29年勅令第24号)
  • 1903年2月14日 第2師管第15旅管(旅管復活。改正「陸軍管区表」明治36年勅令第13号)

1907年に廃止となり、その旧管轄区域は陸軍管区表の改正(明治40年軍令陸第3号)により新発田連隊区に編入された。

隠岐警備隊区

1888年5月に設置され、「陸軍管区表」(明治21年勅令第32号)により第5師管第9旅管に属し、次のとおり管轄区域が定められ、その区域は廃止となるまで変更はなかった。

周吉郡穏地郡海士郡知夫郡

隠岐警備隊は設置されず、警備隊区の業務は松江大隊区が担当し(「陸軍管区表」欄外記載事項、明治21年勅令第32号)、1896年4月1日に大隊区が連隊区となった以降は、浜田連隊区が業務を担った(改正「陸軍管区表」備考1、明治29年勅令第24号)。

所属の師管及び旅管は次のように変遷した。

  • 1896年4月1日 第5師管(旅管廃止。改正「陸軍管区表」明治29年勅令第24号)
  • 1903年2月14日 第5師管第21旅管(旅管復活。改正「陸軍管区表」明治36年勅令第13号)

1907年に廃止となり、その旧管轄区域は陸軍管区表の改正(明治40年軍令陸第3号)により松江連隊区に編入された。

大島警備隊区

1888年5月に設置され、「陸軍管区表」(明治21年勅令第32号)により第6師管第11旅管に属し、次のとおり管轄区域が定められた。その後、の統合により1897年4月1日、管轄区域は大島郡、熊毛郡の2郡となった(改正「陸軍管区表」明治29年勅令第381号)。

大島郡熊毛郡馭謨郡

大島警備隊は設置されず、警備隊区の業務は鹿児島大隊区が担当し(「陸軍管区表」欄外記載事項、明治21年勅令第32号)、1896年4月1日に大隊区が連隊区となった以降は、鹿児島連隊区が業務を担った(改正「陸軍管区表」備考1、明治29年勅令第24号)。

所属の師管及び旅管は次のように変遷した。

  • 1896年4月1日 第6師管(旅管廃止。改正「陸軍管区表」明治29年勅令第24号)
  • 1903年2月14日 第6師管第11旅管(旅管復活。改正「陸軍管区表」明治36年勅令第13号)

1907年に廃止となり、その旧管轄区域は陸軍管区表の改正(明治40年軍令陸第3号)により鹿児島連隊区に編入された。

五島警備隊区

1888年5月に設置され、「陸軍管区表」(明治21年勅令第32号)により第6師管第12旅管に属し、次のとおり管轄区域が定められ、その区域は廃止となるまで変更はなかった。

南松浦郡

五島警備隊は設置されず、警備隊区の業務は長崎大隊区が担当し(「陸軍管区表」欄外記載事項、明治21年勅令第32号)、1896年4月1日に大隊区が連隊区となった以降は、大村連隊区が業務を担った(改正「陸軍管区表」備考1、明治29年勅令第24号)。

所属の師管及び旅管は次のように変遷した。

  • 1896年4月1日 第6師管(旅管廃止。改正「陸軍管区表」明治29年勅令第24号)
  • 1903年2月14日 第12師管第23旅管(旅管復活。改正「陸軍管区表」明治36年勅令第13号)

1907年に廃止となり、その旧管轄区域は陸軍管区表の改正(明治40年軍令陸第3号)により大村連隊区に編入された。

脚注

  1. ^ 1894年10月19日公布の警備隊区司令部条例改正(明治27年勅令第179号)により、対象となる「予備後備将校同相当官」が「在郷陸軍軍人」に変更された。
  2. ^ 『陸軍軍戦備』22頁。

参考文献

関連項目


警備隊区

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西部方面特科隊」の記事における「警備隊区」の解説

警備隊区は大分県中南部の4市を直轄隷下部隊含めると大分県熊本県佐賀県合計3県1714町5である。 特科直轄大分県由布市132特科大隊大分県佐伯市豊後大野市302観測中隊大分県竹田市 西部方面特科連隊西部方面特科連隊#警備隊区を参照第5地対艦ミサイル連隊第5地対艦ミサイル連隊#警備隊区を参照

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