論文『らいに関する三つの迷信』
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「小笠原登」の記事における「論文『らいに関する三つの迷信』」の解説
彼のこの論文は『診断と治療』18巻11号(1931年11月)に発表されたもので、彼の主張が明瞭に表現されている。 ライほど種々な迷信を伴っている疾患は外にないであろう。その第一はらいは不治の疾患であるという迷信である。(中略)この迷信は天下に瀰漫するにいたった理由がある。それは疾患が一定の度を超えると仮令疾患が消失しても生体はもはや旧態には復帰しないということに帰着する。(中略)近頃、内務大臣の主唱の下にらい予防協会というものができたと聞いている。合宿所を設け娯楽機関を充実せしめ、隔離の実をあげてらいの伝搬を予防せんとする計画のようである。しかし、これは明らかにらいは不治であるという迷信に立脚した企てであるかに考えられ甚だものたらない。余の研究室において治療の障害になるもの、一つは宗教的の迷信である。 第二はらいは遺伝病であるという迷信である。これにも理由がある。即ち一定の家系の人にのもらい患者が発生するかの感を与えるという事実に基づく。 その理由の一つにはらいは特殊な体質の所有者にのみ感染する疾患であることを数えなければいけない。 第三はらいは強烈な伝染病であるという迷信である。らいは我が国では古き時代からの病気である。それにもかかわらずこれが伝染病であることが看破せられなかった。今日まで未だ全国民がことごとくらいに犯されるに至っておらぬ。明らかにらいの伝染力は甚だ微弱であることも物語っている。 以上三つの迷信はらい患者およびその一族にたいして甚だしき苦痛を与えている。もし将来らいの対策が企図せられるならば以上の諸迷信を脱却して正しき見解の上に設定せられなければならぬ。
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