読む方向の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/10 15:06 UTC 版)
「フランスにおける日本の漫画」の記事における「読む方向の問題」の解説
日本漫画はバンド・デシネやアメリカン・コミックスと異なって右から左へと読み進めるが、これは通常の文章を水平に左から右へと読むフランスの読者には馴染みのないものである。また、吹き出しのセリフのみを翻訳した場合は文字を読む向きと視線の動きが齟齬をきたすことになる。このため、フランスで翻訳された日本漫画は1978年に最初に紹介されてから1995年ごろまでレイアウト全体の向きを改めて出版されていた。かつての対処法の中には単純な反転印刷もあったが、これは人物の利き手が逆になったり、「心臓を突く」という描写に整合性が失なわれたり、あるいはナチス式敬礼が左手で行なわれたりする(手塚治虫『アドルフに告ぐ』の翻訳 L'Histoire des 3 Adolf などに顕著)など、読者と作者の双方に不都合を生じさせるものだった。オリジナルを尊重しつつ横書きのセリフと馴染ませる方法として、セリフの入れ換えに伴って不都合の生じた描写箇所に手を入れ、さらにページ上のコマ割りをやり直すという比較的丁寧なやり方もあるが(Casterman 社の Ecritures シリーズ など)、これは手間を要する。 現在では、大半の出版社はコスト面と作品性を尊重する意味から日本のものと同じ組み方向で出版している。以前はこのことが一部の読者に敬遠される要因ともなっていたが、1990年代にブームになった後はむしろ多くの読者がオリジナルに近いことを歓迎している。フランス以外でも、このころから日本と同じ組み方向で出版することが普通になった、とMona BakerとGabriela Saldanhaは著書で評している。
※この「読む方向の問題」の解説は、「フランスにおける日本の漫画」の解説の一部です。
「読む方向の問題」を含む「フランスにおける日本の漫画」の記事については、「フランスにおける日本の漫画」の概要を参照ください。
- 読む方向の問題のページへのリンク