言葉の垢落とし
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/25 22:54 UTC 版)
「フランシス・ポンジュ」の記事における「言葉の垢落とし」の解説
ポンジュは既存の価値、観念、ひいては詩の伝統における観念論、主観性、人間中心主義を排し(サルトルは後にこれを「言葉の垢落とし」と呼ぶことになる)、新たな言葉の創造、沈黙からの出発を目指した。このときに、ポンジュが発見したのが物(オブジェ)であり、オブジェをひたすら凝視することで可能な限りオブジェそのもの、書く行為そのものに近づこうとすることであった。すなわち、言語表現における人間中心から物へ向かう方向決定 (parti pris)、「物の味方」をすること、物に加担すること (parti pris des choses) である。ポンジュは、これを「物たちの多様性こそが私を形作っており、私が沈黙そのもののうちに存在することを可能にしてくれる。まるで私は、物たちに取り囲まれた空虚な場所のように」と表現している。とはいえ、詩集『物の味方』の出版までにはまだ数年を要する。既成の言語、「他人たちの言語習慣」の批判を含む社会批判(特にブルジョワ社会批判)から出発し、これまで文学の対象とされなかった籠、煙草、小石、桑の実、台所道具など日常的な事物を取り上げるようになるまでの経緯は、詩人が自らを社会の周辺(少数派、弱者の側)に位置づけるようになる経緯と関わっている。すなわち、ポンジュにあっては、社会から排除された者の立場に身を置くことが、文学伝統から排除された物の発見につながっていくのである。
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