触法事実の調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 07:03 UTC 版)
「少年保護事件の係属」の記事における「触法事実の調査」の解説
触法少年の行為は犯罪とならないから(刑法41条)、捜査機関が触法事実を解明する目的でなす証拠収集活動も、捜査ではなく調査(ちょうさ)と呼ばれることが多い。 「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但し書き)は、犯罪(同法にいう「罪」(199条1項、3項、210条1項、212条、217条など)も同義)の捜査のために認められるから(同法218条1項、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律3条1項柱書)、触法事実の調査については非強制的手段しか用いることができない。触法少年である被疑者の捜査機関に対する供述を録取した書面は、警察実務上、供述調書(刑事訴訟法198条2項)ではなく申述書と呼ばれ、形式面からも捜査とは区別されている。 もっとも、長崎市における幼児殺害事件(2003年7月1日)などを契機に、家庭裁判所に充実した資料を提供し審判をより一層適切なものとする、被害者の「知る権利」に応えるといった観点から、触法事実についても解明の徹底を求める世論が高まり、青少年育成推進本部が同年12月の青少年育成施策大綱で調査権限の明確化を検討するとしたことを受けて、2004年10月現在、法制審議会において、強制調査権限を警察機関に付与することの是非が検討されている。 これに対しては、調査は審判資料の収集を目的とするのだから、仮に調査不足があっても家庭裁判所の援助依頼を受けて補充調査をすれば足りるのに、捜査機関が自らの判断で幅広く資料収集を行えば触法少年に甚大な心理的圧迫を加えることになり、刑法が刑事未成年者を自己の行為の重大性に直面する能力が乏しいがゆえに刑事責任から解放したことを無意味にするとの意見もある。
※この「触法事実の調査」の解説は、「少年保護事件の係属」の解説の一部です。
「触法事実の調査」を含む「少年保護事件の係属」の記事については、「少年保護事件の係属」の概要を参照ください。
- 触法事実の調査のページへのリンク