西洋美術におけるエウローペー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 22:27 UTC 版)
「エウローペー」の記事における「西洋美術におけるエウローペー」の解説
エウローペーは古代ギリシア・ローマ時代には壺絵、モザイク、フレスコ画などで描かれた。それらの多くは牡牛に変身したゼウスによってエウローペーが連れ去られる場面を描いている。この点はルネサンス期においても同じだが、しばしば祝婚、海上進出、領土拡大、子孫繁栄などの意味ともに描かれた。祝婚の例としては、リベラーレ・ダ・ヴェローナ(英語版)が描いたカッソーネ(英語版)の板絵が挙げられる(15世紀後半)。カッソーネとは婚礼用の家具で、その細長い側面に海を渡る牡牛とエウローペーの姿が描かれている。1566年には、コジモ1世の子フランチェスコとジョヴァンナ・ダズブルゴとの結婚を記念する祝賀パレードの山車にエウローペーが描かれた。その一方、ジョルジョ・ヴァザーリがパラッツォ・ヴェッキオの室内装飾で計画した「ユピテルの間」のタペストリーのように、政治的な意味を伴うこともあった(1555年頃)。このタペストリーにはエウローペーが描かれたが、その意図についてヴァザーリはコジモ1世がピオンビーノを占領したことによって、フィレンツェがエルバ島に進出したことを表すと説明している。 エウローペーはオウィディウスの『変身物語』をはじめとする文学作品に挿絵として描かれ、ルネサンス以降、西洋絵画においてもエウローペーは人気のある主題となった。絵画の多くはオウィディウスから主題を取っており、『エウロペの略奪』(Rape of Europe)あるいは『エウロペの誘拐』(Abduction of Europa)などと題されている。最も有名な絵画作品はヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオの『エウロパの略奪』だが、ここに描かれたエウローペーのポーズは文献的、図像的に説明することが困難であるため、画家の独創によると見なされている。同じヴェネツィア派のパオロ・ヴェロネーゼは異時同図法を用い、牡牛がエウローペーを連れ去る過程を前景・中景・後景の3つに分けて描き込んでいる。また他にもよく知られたものとしてグイド・レーニ、レンブラント・ファン・レイン、クロード・ロラン、ギュスターヴ・モロー、20世紀に入ってからはフェリックス・ヴァロットン、ヴァレンティン・セローフといった画家がこの主題を描いている。
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