複雑さの発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/09 03:30 UTC 版)
生命体は複雑適応系である。生物学では複雑さを定量化することは難しいが、進化はいくつかの驚異的に複雑な有機体を生み出した。このことから、「高等生物」と言われるものへと向かう進化という一般的考え方が生まれた。 これが真実ならば、進化は複雑なほうへ向かう能動的な傾向を持っていると考えられる。この種の過程においては、最も典型的な複雑さは時と共に増大すると考えられる。実際、いくつかの人工生命シミュレーションの結果は、進化においてCASの発生は避けられないことを示唆している。 しかし、進化の複雑なほうへ向かう一般的傾向という考え方は、受動的過程として説明することもできる。これには分散の増大が関係するが、最も典型的な値である最頻値は変化しない。従って、複雑性の最大レベルは時と共に増大するが、それは全体として生命体が増えたことの結果である。このような無作為過程を制限つきランダムウォークとも呼ぶ。 この仮説において、より複雑な生命体へと向かう傾向は、複雑性の分布の中で最先端に位置するごく一部の大型で非常に複雑な生命体に注目することによる幻影であり、より多数の単純な生命体を無視した結果である。この受動的モデルでは、種の圧倒的多数が微小な原核生物であり、それが世界の約半分のバイオマスを形成し、地球上の生物の多様性の大部分を構成していることを強調する。すなわち、地球上では単純な生命が大部分を占めており、複雑な生命がより多様に思われるのは標本化バイアスによるものである。 生命が複雑な方に向かう傾向を持たないとしても、特定のケースで複雑なほうへ向かわせる推進力が存在することを否定するわけではない。そのような傾向は、システムをより複雑でない状態へと向かわせる進化的圧力と釣り合っている。
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