薬力学と薬物動態学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 06:43 UTC 版)
薬物療法の基盤となる学問を薬理学(pharmacology)という。生体に対して影響を与える化学物質を薬物(drug)と総称する。臨床で用いられる治療薬は薬物の一部である。薬物が生体に対して及ぼす作用を薬理作用(pharmacological effect)という。薬理学において薬理作用のメカニズムを研究する学問領域を薬力学(pharmacodynamics)という。薬物は分子であり生体内の分子と相互作用して作用を現す。薬物が結合する生体内分子を受容体(receptor)と総称する。したがって、薬理作用は薬物と受容体の分子間相互作用からはじまる。特に治療薬の場合は、最終的に個体において十分な効果があるかどうかで判定される。このことから薬理学では分子レベルの薬物の作用が個体レベルに反映されるまでの、細胞レベル、組織レベル、そして臓器レベルでも薬理作用を理解する必要がある。 一方、薬物を個体に投与して期待する効果を得るためには、薬物をどれくらいの量、いつ投与をすればよいかを決定する必要がある。経口投与か静脈注射かそれとも経皮投与かなどの投与方法も判断しなければならない。したがって、投与した薬物が体内にどのように吸収され、各臓器や組織に分布して、どのくらいの速さでどこから排泄され、標的部位にどのような時間経過で到達するのかを理解する必要はある。このような薬物の生体内動態に関する薬理学の領域を薬物動態学(pharmacokinetics)という。これは生体が薬物に対してどのような作用を及ぼすかを研究する学問領域といえる。薬力学的作用に個体差があるのと同様に、薬物の生体内動態にも個体差があり、これも薬理作用の個体差が生じる原因となっている。また、薬物を標的とする組織に効率よく送達させる薬物送達システム(drug delivery system、DDS)についても開発が進んでいる。 薬物動態学では薬物の生体内動態を吸収(absorption)、分布(distribution)、代謝(metabolism)、排泄(excretion)の4つに分けて分析をする。この4つの頭文字をとりADME(日本ではアドメと呼称される)といわれる。
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