若夏を背泳ぎでゆく東支那海
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季 節 | 夏 |
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評 言 | 『曼珠沙華』(毎日新聞社、平成13年)所収。季語は「若夏」。季節は初夏。 『曼珠沙華』は岸本マチ子の第六句集で、1999年初夏に上梓した第5句集『縄文地帯』以降の1999年秋から2001年初夏までの2年足らずの間の作品294句が収録されている。岸本マチ子は「沖縄は360度海だよ」との恋人(つまりご夫君)の言葉にはるばると渡海してきた。またそれ故に、「あなたは沖縄の海に呼ばれたのよ」と言って下さった方もいらしたとか。 『曼珠沙華』のあとがきには次のような文章が記されている。「亜熱帯の島へ来てもう四十三年になる。気がつくといつの間にか俳句が忍び寄っていた。そうか、ここは歌の島、情(なさけ)の島だったのかと改めて思い知る。もしも、沖縄へ来なかったらわたしは、文学とは無縁の世界で生きていたかも知れない。」 ところで、この句にある「若夏」とは陰暦四月ごろを言い、おもろ(琉球古謡)ではうりずんとの対語、同義語として用いることもある。若夏は、明るい、心のうきうきした、しかも清らかな意をふくめた初夏のことを述べた言葉である(『沖縄・奄美 南島俳句歳時記』)。 しかるに昨今の沖縄を取り巻く状況を考えると、明るい若夏の頃といえど東支那海にて伸びやかににゆったりと背泳ぎ等が出来るだろうかと問われればはなはだ疑問符をつけざるを得ない。 尖閣諸島へ堂々(?)と領海侵入を繰り返す中国。普天間基地の代替えに県内の辺野古へと強行する日米両政府。早くこの閉塞感を脱してのびのびと青い海で泳ぎたいものである。 |
評 者 | |
備 考 |
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