芒原キツネにさびしい尾があって
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季 語 |
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秋 |
出 典 |
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前 書 |
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評 言 |
心象のキツネが現れた。尾は太くて長い。「芒原のキツネ」の世界が見えて来た。 実際、夜行性の狐が行動狡猾で人を化かすという伝承があるにしても、眼前の動物はやはり心象のキツネである。「芒原のキツネ」「さびしい尾があって」の世界であれば、季重ねにはならない。さびしい尾が愛おしく思えてくる、同時に句全体が芒原いちめんに変っていくようでおもしろい。自然は全てをさらけだしている。 作者は、“出来るだけ肩の力を抜いて俳句とつき合っていきたい、自然にわき出るような句を作りたい。また、戦中、戦後を肌で感じながら育った昭和一桁生まれの私にとって、「昭和」という時代にたいする思いは深い”と、言っている。 室生氏は、岡山県笠岡市生まれ。大阪府箕面市在住。昭和27年「青玄」入会、日野草城に師事。昭和31年草城没後は伊丹三樹彦に師事。平成18年「青玄」終刊により、19年後継誌「暁」を創刊、代表。 20年、第63回現代俳句協会賞を受賞。句集に、『海辺』『夕景』、他に『日野草城全句集』『日野晏子遺句集』『日野草城句集』の編集 など。 句集『昭和』より(平成21年角川書店刊) 昭和ヒトケタ前へ進めず花の中 飛花落花昭和を忘れたい人に 大昼寝老いては猫にしたがって 母をなおこの世にのこすぼたん雪 眼帯して少年の日の西日に会う 芒原昭和の波の音ばかり 父の声探す黄落の樹を揺すり |
評 者 |
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備 考 |
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