臨床検査における偽陽性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 13:58 UTC 版)
「ベイズ推定」の記事における「臨床検査における偽陽性」の解説
偽陽性はどのような検査でも問題になる。完全な検査はありえず、検査結果が誤って陽性(実際には陰性)となることもある。例えば患者に特定の病気の検査を行う場合、実際には病気でないのに病気だという検査結果を出してしまうことが(少ないながら)ある。ベイズの定理から、もし病気が稀なものならば、(検査自体が正確でも)陽性の結果の多くが偽陽性ということもありうるのがわかる。 特定の病気の検査で、成功率が非常に高い、具体的には 患者が実際に病気であるならば、99%の場合には(確率0.99)検査結果は正しく「陽性」となる。 患者が実際は病気でないならば、95%の場合には(確率0.95)検査結果は正しく「陰性」となる。 としよう。そして患者の0.1%が実際に病気だとしよう(確率0.001)。こうして、検査結果が陽性だったという条件下で、それが偽陽性である確率をベイズの定理を用いて計算しよう。 A を「患者が病気である」という事象、B を「結果が陽性だった」という事象とする。ベイズの定理により、陽性結果が本当の陽性だった確率は P ( A | B ) = P ( B | A ) P ( A ) P ( B | A ) P ( A ) + P ( B | A C ) P ( A C ) = 0.99 × 0.001 0.99 × 0.001 + 0.05 × 0.999 ≈ 0.019 {\displaystyle {\begin{aligned}P(A|B)&={\frac {P(B|A)P(A)}{P(B|A)P(A)+P(B|A^{C})P(A^{C})}}\\&={\frac {0.99\times 0.001}{0.99\times 0.001+0.05\times 0.999}}\approx 0.019\end{aligned}}} そして陽性結果が偽陽性である確率はおよそ 1 − 0.019 = 0.981 となる。 検査の正確性は見かけ上高いにもかかわらず、病気の発生率が非常に低い(1000分の1)ため、陽性の結果となった患者の圧倒的多数(100人に98人)が実際には病気でない。それでも陽性の結果となった患者のうち実際病気である割合 (0.019) は、検査結果を知る前の割合 (0.001) より大幅に絞り込まれている。このように検査は決して無駄ではなく、再検査によってより正確な結果を知ることができる。 さて、検査は理想的には、患者が病気でないときには非常に高い信頼性で陰性の結果を出さねばならない。数学的にいうとこれは、上記の分母の第2項が第1項に比較して小さくなければならないということである。たとえば病気でない患者について 0.999 の確率で陰性の検査結果が出る(上の例では 0.95 だったが)とすれば、この値から計算して偽陽性の確率はおよそ (1 − (0.99 × 0.001/(0.99 × 0.001 + 0.001 × 0.999))) = 0.50 となり、偽陽性の率は約98/100から約50/100に減ることになる(これでもまだ半分は偽陽性だ)。 この例のようにベイズの定理は、稀な条件における検査は、1回の検査で信頼の置ける結果を出せる高い正確性を持つと共に、偽陽性の可能性を覚悟せねばならないことを教えてくれる。偽陰性の確率も同様にベイズの定理から計算することができる。
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