のうけっかん‐れんしゅく〔ナウケツクワン‐〕【脳血管×攣縮】
脳血管攣縮
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 09:52 UTC 版)
血腫の影響で脳の動脈が縮むことを脳血管攣縮といい、発症後4日から14日の間に発現する。脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の3-4割で起こり、出血を起こした血管以外の血管も攣縮することから虚血となり、梗塞に発展することもある。 脳動脈瘤は大脳動脈輪(ウィリス動脈輪)の近傍に形成されることが多い。 脳への血流は必ず大脳動脈輪を通る。 大脳動脈輪以後の動脈支配には側副血行路がない。 以上の要因により、血管攣縮による梗塞は通常の脳梗塞よりも重篤なものとなる。 脳血管攣縮の機序(メカニズム)は次の通りである。 まず、血管周囲の血腫に含まれるヘモグロビンは3-4日の間に変質してヘモジデリンやヘミンとなる。 これらが周囲の血管壁が分泌する一酸化窒素 (NO) を分解する。 動脈は常に血管を拡張させる物質 (NO) と収縮させる物質(エンドセリン)を分泌しており、その量の調節によって血流を自立的にコントロールしている。しかしNOが分解されてしまうことにより、血管収縮物質のみが残ってしまう。 また、発症時以降に虚血を起こした/今も起こしている脳組織の腫脹により、脳血管が圧迫される。 後述の尿崩症によっても、血管内容積と血圧が低下して灌流圧が弱くなる。 さらには、傷害の影響による波及的皮質脱分極が脳の酸素要求量を亢進させ、軽度の虚血であっても神経細胞の死滅を来たす。 脳血管攣縮の診断は、経頭蓋的なドプラーエコーによって行う。この時血流が通常よりも速くなっていれば、脳血管攣縮が起き始めていることを表す。また、完全に梗塞が起きてしまった場合には、CT上大きな低吸収域が認められることによって診断が確定する。脳血管攣縮の危険性は、CT上の血腫の大きさと分布をFischerグレードで表すことである程度予測できる。 梗塞まで至らない軽度の血管攣縮は、脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血のほぼ全例に見られるため、「遅発性脳梗塞」「遅発性脳梗塞性障害」と呼んで区別することも提唱されている。
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