脊椎動物のパターン形成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/09 02:31 UTC 版)
「エンハンサー」の記事における「脊椎動物のパターン形成」の解説
動物の発生において、体軸の決定は重要な段階である。マウスの胚発生において、TGF-βスーパーファミリーのリガンドであるNodal(英語版)は、初期胚の前後軸と左右軸の双方のパターン形成に関与する重要な因子である。Nodal遺伝子には、PEE(Proximal Epiblast Enhancer)とASE(Asymmetric Enhancer)という2つのエンハンサーが含まれる。PEEはNodal遺伝子の上流に位置し、原始線条の結節へ分化する部分(原始結節(英語版)とも呼ばれる)でのNodalの発現を駆動する。PEEはWntシグナルと未知のシグナルとの組み合わせに応答してNodalの発現を駆動する。LEF/TCF転写因子ファミリーが結節内の細胞のTCF結合部位に結合すると考えられる。Nodalの結節からの拡散によって濃度勾配が形成され、胚の前後軸のパターンが確立される。ASEはイントロンに位置するエンハンサーで、フォークヘッドドメイン(英語版)転写因子Fox1が結合する。発生初期には、Fox1によって駆動されるNodalの発現は臓側内胚葉(visceral endoderm)を確立する。より後の段階では、ASEへのFox1の結合は側板中胚葉の左側でのNodalの発現を駆動し、中胚葉での非対称な器官の発生に必要な左右非対称性を確立する。 原腸形成(英語版)の際の3つの胚葉の確立は、動物の発生に重要な他の段階である。三胚葉にはそれぞれ、分化と発生を促進する特有の遺伝子発現パターンが存在する。初期発生において、内胚葉はGata4(英語版)の発現によって特定され、Gata4は後に腸の形態形成を指揮する。初期胚において、Gata4の発現は他のフォークヘッド転写因子、FoxA2が結合するイントロン性エンハンサーによって制御されている。まずエンハンサーは胚全体で幅広く遺伝子発現を駆動するが、発現はすぐに内胚葉に限定されるようになる。そのため、他のリプレッサーが抑制に関与している可能性が示唆される。より後の段階では、同じエンハンサーによって胃と膵臓になる組織に発現が限定される。腸の発生の中間段階での内胚葉でのGata4の発現の維持は、さらに他のエンハンサーが担っている。
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