群集心理のメカニズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/04 03:47 UTC 版)
群集を構成する人々のさまざまな感情や観念が、同一の方向に収束していく心理的機制にかかわる理論仮説として、アメリカの社会心理学者R・H・ターナー(Ralph Herbert Turner)は「感染説」「収斂(しゅうれん)説」「創発規範説」をあげている。感染説によれば、ある種の感情、観念、行動様式が暗示や模倣を媒介に人々に感染し、無批判的に受容されてゆく結果、群集心理の雪崩(なだれ)現象を引き起こすというのである。収斂説では、もともと類似した興味、関心、志向を共有する人々が共通の刺激状況のもとで、その潜在的先有傾向を一斉に顕在化するために、心的同質性が生ずると説明する。したがって、群集心理の同質性は、群集行動の結果ではなく、その原因あるいは先行条件だということになる。創発規範説は、感染説、収斂説のいずれにも批判的であって、群集という集合現象の場において形成される固有の社会規範の成立とともに、その規範に適合する行動を容認、促進し、不適合な行動を抑制、禁止する社会的圧力が働くために、群集行動が全体として均質化すると主張する。群集心理あるいは群集行動に関するこれらの理論仮説は、相互排他的であるよりも、相互補完的な説明原理であると理解すべきであろう。
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