美男アズィーズの物語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 10:08 UTC 版)
「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「美男アズィーズの物語」の解説
わたしの父は豪商で、亡くなった叔父の娘アズィーザはわたしの許婚者だった。所定の年齢に達し、婚礼を行うことになった日のこと。祈祷に行って汗をおさえかねたわたしがうずくまっていると、頭上の窓から美しい女がハンカチを落としてくれた。女は不思議な合図をすると姿をかくしてしまったが、すっかり心をうばわれたわたしは、婚礼を放っておいて日暮れまでそこでずっと待っていた。夜になると、客たちはみんな帰っており、父は婚礼を一年延期したらしい。アズィーザにすべてを正直に話すと、彼女はけなげにも女の合図の謎解きをし、力添えをすると言ってくれる。 二日後、再度女のもとへ行くが、またしても謎めいた仕草をして姿を隠してしまった。帰るとアズィーザは泣きはらした様子だったが、またしても謎解きをしてくれる。その言葉に従って五日後にまた女の家に行くが、女は姿をみせなかった。むなしく帰ったわたしは、またも泣き暮らしていたらしいアズィーザを、つっけんどんに突き飛ばす。 アズィーザの助言により次の日も女の家に行くと、またも謎かけをして姿を消した。悲しみにくれる従姉妹は、それでもわたしに知恵をさずけ、女に会ったら言えという詩をさずける。 次に女の家にいくと戸が開いており、ご馳走が用意されていた。数時間待っても誰もこず、空腹に耐えかねてご馳走を食べると、睡魔に襲われて眠ってしまう。次に気がつくと朝になっており、わたしの腹の上には塩と炭がのせられていた。帰って歎きのふちにいるアズィーザに報告すると、それは眠ってしまったことを責めるしるしだという。 今度は絶対に眠るなと言われたのだが、やはり睡魔に勝てず眠ってしまった。翌朝わたしの腹にはいくつかの品が置かれ、そのわきに一振りの小刀が会った。それは、こんど眠ったらお前の首をかく、というメッセージだという。そこでアズィーザは、昼のあいだわたしを眠らせ、食物を与えたのちに送り出した。その甲斐あって、わたしはやっと女と本懐を得ることができた。次の朝、女は「樟脳と水晶の島々」の王女が作ったという、カモシカが刺繍された布切れをわたしに渡した。 帰るとアズィーザは病にふせっており、あの詩は伝えたかと問いただす。忘れていたわたしは、次の日間違いなく女に伝えると、女は返詩を送った。帰宅するとアズィーザはかなり悪い様子だったが、さらに二節の詩をさずける。それを女に伝えると、彼女はこの詩を詠んだものはすでにこの世にいない、と告げた。はたしてアズィーザは、その日みまかっていたのである。 母親はわたしを責め、アズィーザが遺したメッセージを伝える。「いかばかりか死は快く、裏切りにまさるものぞ!」という一文を言うように、と。さらにアズィーザは、わたしが本心から彼女の死を悼んだときに渡すようにと、ひとつの品を母親に託したという。 わたしがアズィーザのメッセージを伝えると、女は、その言葉によりお前はわたしの破滅の企みをのがれることができたのだ、と言った。さらに、わたし以外の女に目を向ければ同じ運命になるだろう、なぜならお前に知恵をさずける女はすでにこの世にないのだから、と。それからわたしと女は蜜月の日々を送ったのである。 あるとき老婆に手紙の代読を頼まれたわたしは、その家の娘に目をうばわれたすきに監禁されてしまう。娘は、自分と結婚する以外に「あばずれダリラ」からのがれるすべはない、と言った。そして、「あばずれダリラ」の手に落ちながらまだ生きているのはなぜかと問う。わたしがアズィーザの話をすると納得した様子であったが、その後公証人をまじえて正式な婚礼をむりやりとりおこなう。 翌朝立ち去ろうとするが、この家の門はまる一年後にしか開かないという。しかたなく一年すごし、次の日までには帰るという約束で外に出ると、ダリラの家の前に通りがかった。わたしが消えたことを悲しんでいたダリラに、これまでのことをすべて話すと、ダリラはわたしが結婚したことに激怒する。彼女はわたしを殺すつもりだったが、「いかばかりか死は快く、裏切りにまさるものぞ!」と叫ぶとひるみ、命のかわりにわたしの男根を切り落とした。その後妻の家に帰るが、不具になったことを知ると妻はわたしを放り出してしまう。しかたなくわたしは母の元へもどった。 母は父の死を告げた。そして、アズィーザに対するわたしの悔恨の情をみてとると、彼女が遺した品物を渡す。それはカモシカが刺繍された二枚目の布切れだった。布切れにはメモがはさまれており、これは「樟脳と水晶の島々」の王女セット・ドリアから譲られたものであり、不幸に耐えがたいときは王女を訪ねるとよい、という。そこでわたしは、隊商にまじって旅に出ることにした。 「樟脳と水晶の島々」につき、セット・ドリアの美貌に目を奪われたわたしだが、しかし不具の体ではどうすることもできない。わたしは深く絶望し、帰国の途について、この「緑の都」に入ったのである。
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