絶滅確率の推定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 05:44 UTC 版)
「維管束植物レッドリスト (環境省)」の記事における「絶滅確率の推定」の解説
絶滅確率の推定は絶滅リスク評価とも呼ばれ、この理論的研究は1980年代に大きく発展しており、IUCN版レッドリストにおいてもMaceとLande(1991)により提案がなされている。しかしながら、絶滅確率の推定には、その種の個体数の変動や現存する個体数、齢構成、繁殖率などの情報が必要であり、それらの情報は野外に生育・生息する生物に対してはほとんど判明していない。そのためIUCN版レッドリストではほとんど採用されていない基準(E基準)であるが、環境省版の維管束植物レッドリストでは以下の手法に基づき、E基準を適用している。 維管束植物レッドリストでの絶滅確率の推定(E基準)では、将来の絶滅確率が何パーセントであるかにより判定する。 絶滅危惧IA類 - 10年後(または3世代)の絶滅確率が50%以上 絶滅危惧IB類 - 20年後(または5世代)の絶滅確率が20%以上 絶滅危惧II類 - 100年後の絶滅確率が10%以上 準絶滅危惧 - 100年後の絶滅確率が0.1%以上 具体的には、現地調査によって得られた個体数と減少率の段階(レベル)の数を基に、数値シミュレーションを1000回ずつを行い、10年後、20年後、100年に絶滅(個体数が1以下未満)が起きた回数を数え、その回数を1000で割った値を絶滅確率としている。 絶滅確率を推定する上で、個体数が10,000個体以上存在するメッシュがある場合、個体数が不明のメッシュがある場合、メッシュ数が少なく個体数が安定している場合などにおいては、過大評価されている可能性がある。この場合にはE基準の採用せずに他の基準を採用している。 このように維管束植物レッドリストにおける絶滅確率の推定には、多くの数学的・生物学的仮説が含まれており課題が残されているものの、主観に左右される定性的な評価よりも適切である。レッドリストおよびレッドデータブックの編集に携わった矢原徹一(2002)は絶滅確率の推定を「将来を正確に予測するよりもむしろ、仮定を明確にした上で、将来のリスクを評価している」、「このように一連の過程に基づく絶滅リスクの評価は、正確とは言い難い」としている。
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