簡単な数式による説明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/27 02:26 UTC 版)
「クラウディングアウト」の記事における「簡単な数式による説明」の解説
他の状況が一定であるとき、流動性の罠など特別な場合を除けば、LM曲線が右肩あがりになっている状態で財政支出が増大すると利子率が上昇するため民間投資が縮小する。これにより、財政支出による国民所得増大効果の一部が、民間投資縮小による国民所得削減効果によって相殺されることになる。 クラウディングアウトを説明するために財市場を考える。話を簡単にする為、閉鎖系経済を考え、海外との輸出入はないものとすると、国民所得Yは、家計の総消費Cと企業の総投資Iと政府の支出(財政支出)Gの総和になるので、 Y = C + I + G {\displaystyle Y=C+I+G} となる。 さて、所得のうち割合cだけ消費にまわるとすると、国民所得Yと総消費Cとの間には、 C = c Y {\displaystyle C=cY} の関係が成り立つ。(cは限界消費性向と呼ばれる)。 一方企業の総投資Iは、利子率によって決定されるので、I=I(r)と書き表す。Iは利子率rが低ければ低いほど大きくなるはずなので、I(r)はrに関し単調減少である。 以上より、 Y = ( I ( r ) + G ) / ( 1 − c ) {\displaystyle Y=(I(r)+G)/(1-c)} が成立する。Gとcが定数だとすれば、これはrとYの関係を表す式となり、この式をIS曲線という。 次に貨幣市場が均衡する為には、 総貨幣需要Lと総貨幣供給M/Pは一致しなければならない。Lは国民所得Yと利子率rにより決定されるので、L=L(Y,r)と書ける。L(Y,r)=M/PをYについて解いた曲線をLM曲線とよび、 Y = L M ( r ) {\displaystyle Y=LM(r)} とあらわされる。さて、Yが大きければ大きいほどLは大きくなり、rが大きければ大きいほどLは小さくなる(投機的貨幣需要)。従ってLM(r)は単調増大となる。 「流動性選好」も参照 財市場と貨幣市場はIS曲線とLM曲線が交わった所で均衡する(IS-LM分析)。したがって L M ( r ) = ( I ( r ) + G ) / ( 1 − c ) {\displaystyle LM(r)=(I(r)+G)/(1-c)} となり、これを解いて、 G = ( 1 − c ) L M ( r ) − I ( r ) {\displaystyle G=(1-c)LM(r)-I(r)} LM(r)は単調増大、I(r)は単調減少だったので、上の式の左辺(1-c) LM(r) - I(r)はrに対し単調増大となる。従って財政支出Gが増大すれば利子率rが上昇する。従ってI(r)の単調減少性より企業の総投資I=I(r)は減少する。 以上の議論より、財政支出Gが増大すれば総投資Iが減少する事(すなわちクラウディングアウトが起こる事)が証明された。だが、肝心の実質国民所得レベルYが増加するのか減少するのかについては言及が無い。仮にクラウドアウトがおこり民間投資が減少しても、それを補ってあまりある政府支出を行った場合には全体として実質生産量が増加するシナリオもある。 LM曲線が垂直の場合(貨幣需要の利子弾力性がゼロの場合)には、クラウディングアウト効果は完全となり、財政政策は国民所得を拡大させず無効となる。またLM曲線が水平の場合(流動性の罠)には、クラウディングアウト効果はゼロとなり、財政政策は完全に有効となる。
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