節制の意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 07:38 UTC 版)
四旬節中には厳格な断食をなすという習慣は、古代末期から中世にかけて確立する。肉はもちろん卵、乳製品の摂取が禁じられており、一日一度しか十分な食事を摂ることができないとされた。キリスト教では、イエス・キリストの受難と死は人間の罪を贖うためであると考えてきた。古代以来、キリスト教徒たちはその苦しみに少しでもあずかろうとしてきたのである。 中世に入るとそのような意義が忘れられ、徐々にしぶしぶ行う義務的な節制という意識が強まってきた。四旬節に入る前に祝宴を行う習慣は「カーニバル(謝肉祭)」として現代に至っている。元々カーニバルはキリスト教と無関係な異教の慣習に由来するといわれているが、いつのまにか四旬節中の肉の節制に入る前にドンちゃん騒ぎをする習慣として根付くことになった。マルディグラと呼ばれる祝いは特に有名である。 そうしたことから、近代以降の西方教会では節制を「義務」でなく「自ら選び取る」ものであるということを強調するようになった。西方教会では食事の節制を形式的なものと考え、肉などの主要な食べ物でなく自分が好きな食べ物を節制する、あるいは自分が好きな娯楽を自粛する、節制の代わりに慈善活動を行う、などといったことも行われるようになった。 現代でもキリスト教徒にとって、四旬節中の節制にはキリストの苦しみを分かち合うという意味がある。しかし今日では、アメリカナイズや物質文明などの社会の変化により、西方教会においてはかつてのような厳格な実施は求められていない。 現代のカトリック教会における四旬節中の節制は以下のようなものである。まず、対象となるのは18歳から60歳までの健康な信徒である(教会法1251条)。教会法1253条は大斎の実施については各国の司教団の決定に従うよう書かれている。基本的には大斎の日には一日一度十分な食事をとり、あとの2回は僅かに抑える。大斎の日には肉を摂らないという小斎も同時に行われる。現行のカトリック教会法では毎週金曜日と灰の水曜日や聖金曜日に小斎を行うというのが基本的な形式である。
※この「節制の意義」の解説は、「四旬節」の解説の一部です。
「節制の意義」を含む「四旬節」の記事については、「四旬節」の概要を参照ください。
- 節制の意義のページへのリンク