破損とメンテナンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 05:28 UTC 版)
砂防堰堤で致命的な破損は下部の洗堀、もしくはダムの袖を埋め込んでいる両岸斜面の洗堀や崩壊により貯砂を無制御状態で下流に流してしまうことで、いわゆる「底抜け」や「袖抜け」と呼ばれる。甚だ激しい場合は決壊につながり、ダムが貯めていた土砂が一気に下流へ流れ出すことになる。近年では2018年に広島県坂町小屋浦で砂防堰堤の決壊事故が発生し死傷者が出ている。 底抜けや袖抜けを起こさないようにダムの底部や両岸の根入れには十分を行う。また、下流側に本堤より低い副堤を設けることで流水の浸食能力を減衰したり、下流側に蛇篭の埋め込みやコンクリート三面張りの水路にして浸食と洗堀を防止する場合もある。袖部に関しては「袖隠し」や水通し下流部に「側壁」と呼ばれる護岸パーツを付けることで極力端部が露出しないようにしている。コンクリートダムにおける亀裂(特に漏水を伴うものは危険度が高い)や鋼製枠ダムにおける鋼材の破断による中詰材の流出もダムの強度を大きく下げかねない重大な破損である。 渓流では土砂がたまりダムの貯砂可能容量はやがて減少する。貯砂可能容量が減少した状態で土石流が発生した場合、下流に被害が及ぶ可能性があるので、容量を回復させるために浚渫する場合がある。ただし、満砂状態になることによって上流側の勾配が緩和されダムの機能を果たしているとして浚渫を行わない場合も多々ある。特に治山ダムでは河床勾配が緩和されて保安林の健全な生育環境になっているとして、逆に勾配を増加させることになる浚渫はほとんど行われない。スリット式ダムでは水生生物の移動等に重点を置いた場合、堆積物を適宜取り除きダムを挟んで大きな高低差が無いようにすることが求められる。 このほかの破損としては、土石の流下による水通し部の摩耗や袖部の欠損、打継目からの漏水、鋼製の場合は鋼材の錆び、石積の場合は石の抜け落ちなどがある。個別に補修されることもあるほか、損傷が甚だひどい場合はそのダムを放棄し、すぐ下流側に新しいダムを作ることで、損傷が大きなダムを新しいダムの堆砂敷に埋没させるという更新方法もよく行われる。
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