目標領域の選定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 16:10 UTC 版)
「ハッブル・ディープ・フィールド」の記事における「目標領域の選定」の解説
観測対象として選ぶ領域はいくつかの基準を満たしている必要があった。まず、我々の銀河系の円盤面上にある塵や暗い物質により遠方の銀河の観測が妨げられるため、目標とする領域は銀河系面から遠い、銀緯の高いところでなければならない。目標とする領域は、深宇宙にある天体の様々な波長での研究を容易にするため、既知の明るい可視光源(手前にある恒星など)や、赤外線、紫外線、X線の放射を避ける必要があった。また、冷たい水素ガスの雲(HI領域)の中にある暖かい塵の雲からのものと考えられている、巻雲状の背景赤外線放射(シラス(英語版))が弱い領域である必要もあった。 これらの条件から、目標領域として選択できる範囲はかなり絞られる。さらに、目標領域は、ハッブル宇宙望遠鏡の軌道上で地球や月に掩蔽されない「継続観測領域」(continuous viewing zones、CVZs)の中にあるべきだと決められた。作業部会は、ケック望遠鏡やキットピーク国立天文台の望遠鏡、超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)といった北半球にある望遠鏡が追跡調査観測ができるように、北半球のCVZに絞ることを決めた。 これらの条件を全て満たす20の領域がまず確認され、その中でも最適な領域の候補が3つ選ばれた。それらは全ておおぐま座にあった。電波によるスナップ写真観測から、これらの領域のうちまず1つが電波の放射源を含むとして除外された。残った最後の2つの領域のどちらにするかの決定は、視野の近くに恒星の追尾に使える星があるかということを元にして行われた。ハッブル宇宙望遠鏡は通常、露出中に望遠鏡の高精度ガイドセンサーが固定追尾できる近接した恒星のペアを必要とするが、HDF観測の重要性を考えると、2組目の予備のガイド星が必要だった。最終的に選ばれた領域は、赤経12h36m49.4s、赤緯+62°12′48″に位置しており、領域の幅は2.6arcminでその面積は5.3 arcmin2である。
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