癌治療への応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/15 15:12 UTC 版)
ジクロロ酢酸塩は、酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼを阻害するため、潜在的な薬物として研究されている。予備研究では、ジクロロ酢酸が動物研究およびin vitro研究で特定の腫瘍の成長を遅らせることがわかったが、アメリカがん協会は「現時点(2012年)で癌治療にジクロロ酢酸を使用することを支持する証拠はない」と述べた。治験以外でジクロロ酢酸を試そうとする場合、潜在的な問題について警告されている。膠芽腫に苦しむ5人の患者への唯一のジクロロ酢酸のin vivo投与量は、がんに対するその有効性をテストするようには設計されていなかった。この研究はむしろ、副作用(例、ニューロパチー)を引き起こすことなく、特定の投与量で安全に投与できるかどうかを確認するためのものであった。5人の患者全員が、研究中に他の治療を受けていた。in vitroおよびこれら5人の患者から抽出された腫瘍の観察は、膠芽腫がん細胞に見られる異常なミトコンドリアを脱分極することによりジクロロ酢酸ががん細胞に作用する可能性を示唆している。この機序は、ミトコンドリアが悪性細胞のアポトーシス(細胞死)を誘発することを可能にするためである。ミトコンドリアの異常が少ないと確認されている神経芽細胞腫に対するジクロロ酢酸のin vitroでの研究は、悪性の未分化細胞に対する活性を示した。2016年の症例報告では、中枢神経系の悪性腫瘍におけるジクロロ酢酸の潜在的な適用について議論し、考察している。2018年の研究では、ジクロロ酢酸 が解糖系(ワールブルク効果 (腫瘍学))からミトコンドリアの酸化的リン酸化への代謝スイッチを引き起こし、腫瘍細胞に影響を与える活性酸素ストレスを増加させる可能性があることが判明した。これらの効果は、非腫瘍細胞では観察されなかった。
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