生物学的作用機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/29 08:45 UTC 版)
all-trans-レチノイン酸(ATRA)は、レチノイン酸受容体(英語版)(RAR)に結合することで作用する。RARはレチノイドX受容体(英語版)(RXR)とのヘテロ二量体としてDNAのレチノイン酸応答エレメント(RARE)と呼ばれる領域に結合する。ATRAの結合によってRARのコンフォメーションが変化し、近傍の遺伝子(Hox遺伝子や他の標的遺伝子)の転写誘導または抑制を行う他のタンパク質の結合に影響が生じる。RARは、さまざまな細胞種において分化を制御する異なる遺伝子のセットの転写を媒介する。そのため、RARによって調節される標的遺伝子は標的となる細胞に依存している。一部の細胞では、標的遺伝子の1つはレチノイン酸受容体自身(哺乳類ではRARβ(英語版))であり、応答の増幅が行われる。レチノイン酸レベルの制御は、レチノイン酸の合成と分解を制御するタンパク質のセットによって維持されている。 ATRAとHox遺伝子の間の相互作用の分子的基礎は、GFPのレポーター遺伝子コンストラクトを持つトランスジェニックマウスでの欠失分析によって研究が行われてきた。こうした研究によって、最も3'側に位置するHox遺伝子のいくつか(Hoxa1、Hoxb1、Hoxb4、Hoxd4など)の近接配列に機能的なRAREが同定されており、遺伝子とレチノイン酸との直接的な相互作用が示唆されている。こうした研究は、レチノイドが脊椎動物の胚発生におけるHox遺伝子を介したパターン形成に正常な役割を有していることを強く支持している。
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