生物学的・人口学的位置付け
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 13:44 UTC 版)
「ロジスティック方程式」の記事における「生物学的・人口学的位置付け」の解説
ロジスティック方程式は、非常に簡単な生物学的意味からモデルを導くことができる。r と K の2つのパラメータに種の特性に関わる議論を集約して、とても簡明なモデルを構成している。また、式の特徴である個体数密度の上昇が増加率を抑えるロジスティック効果は、個体群生態学における基本原理ともいわれる。個体数が少ない内は指数関数的に増殖し、個体数が増えてくると増加が止むという現象自体は、正確に前提条件に当てはまらないような個体群成長であっても、広く認められる現象であり、この一般的傾向をロジスティック方程式は上手く表しているとも評される。 ただし、一見してロジスティック曲線のような個体群成長を示すデータであっても、そのデータに上手く曲線あてはめできる数理モデルは数多く存在する。ロジスティック方程式のみが唯一当てはまるということはまずない。この式が個体群成長の「普遍則」のように受け止められるのは誤解であると、数理生物学者のジェームス・D・マレーや応用数学者のスティーブン・ストロガッツは指摘している。 人口予測に関しても、人口学者のジョエル・E・コーエンは「ロジスティック曲線は短期的な予測に関しては、他の連続でなめらかな曲線と比べて特に劣っていることもないが、長期的な予測に関しても格別に秀でているわけでもない」と評している。式を普及させたレイモンド・パールは、ある期間の人口成長にロジステック曲線が適用できる条件として、人口成長に影響を与える新しい要素がその期間中に現れないことを挙げている。しかし、このような前提条件を人口という複雑な現象に課すのは困難である点を経済学者のA. B. ウルフや人口学者のジョージ・ハンドリー・ニブス(英語版)などから批判されている。2010年代現在、将来人口推計にはコーホート要因法の使用が主流となっている。ロジスティック曲線のような関数を過去の人口データに重ねて将来の人口を予測するという単純な方法は、現在ではほとんど行われていない。 以上のように、ロジスティック方程式が個体群成長の「普遍則」というわけではないが、個体群成長モデルにおける基礎的なアイデアを有しており、より複雑な現象に対応する様々なモデルへ拡張されたり、その考え方が取り入れられたりする。個体群成長のモデルの中で「出発点」として位置づけされる。
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