理論別の解析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 21:36 UTC 版)
話題化構文の解析は、理論によって異なる。句構造文法(Xバー理論など)によれば、文法的手段による話題化(例えば英語における左方移動)は、複雑な構文木(ツリー)の下層から上層への移動であり、不連続性が発生する可能性が高い。一方、依存文法の構文木は比較的平坦であるため、多くの話題化は不連続性を伴わず、単なる倒置として捉えることができる。 まず、定形動詞(英語版)(finite verb)を持たない単純な例を挙げる。これは映画『スター・ウォーズ・シリーズ』において、ヨーダがアナキン・スカイウォーカーに言う台詞である。ヨーダは常に倒置的な話し方をするため、実世界の英語母語話者にとっては容認度が下がる可能性があるが、それでも非文ではない。 それぞれ、b. がヨーダの台詞で、a. がその基底構造と思われる文である。 上側の2つは、句構造文法の中でも比較的平坦で、「文=動詞句」という考え方による構文木解析である。下側の2つは、依存文法による解析である。なお、依存文法では、定形動詞句という構成素の存在を認めていない。 この場合、どちらの解析においても、枝が他の枝を横切っておらず、すなわち不連続性が発生していない。こういうケースは単なる倒置とみなすことができる。 次に、句構造文法の中でも比較的複雑な解析を示す。これは、定形動詞句を文の構成素として捉え、話題化は移動もしくはコピー&削除(copy and deletion)だとする考え方である。 移動またはコピー&削除という解析方法を用いれば、単なる倒置として説明できない文にも対応できる。しかし、この例では have much to learn という動詞句に含まれる補部名詞句 much to learn が左方に移動することによって、主要部動詞 have との間に不連続性が生じてしまう。言い換えると、have と much to learn を直接、枝で結ぼうとすれば、他の枝を横切ることになる。 移動以外には、素性浸透(feature passing)という理論もある。これは、話題句は移動したりコピーされるのではなく、元々その位置にあるのだという考え方である。それによると、話題句とその統率子(英語版)(governor)がリンクされ、話題句に関する情報(素性(そせい))がそのリンクを伝わり、統率子に届けられることになる。 ヨーダの、Careful you must be when sensing the future, Anakin. という台詞の前半部分を構文木で示す。a. が句構造文法、b. が依存文法による素性浸透解析である。それぞれ、careful(話題)の素性がまず上昇し、赤文字の節点(node)を経由して右方向に流れた後、be(統率子)に下降している。 話題化は長距離でも可能なので、素性浸透も長距離にわたって可能でなければならない。最後に、かなりの長距離におよぶ素性浸透を依存文法ツリーで示す。 ここでは、話題句 such nonsense に関する情報(素性)が、赤い節点を伝い、その統率子 spouting に浸透する。なお、これらの赤い節点にある単語はちょうど、カテナを成している。すなわち、少なくとも依存文法においては、カテナと話題化は無関係ではないと言える。
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