狂歌の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 14:40 UTC 版)
ほとゝぎす自由自在に聞く里は酒屋へ三里 豆腐屋へ二里(頭光(つむりのひかる)) 花鳥風月を常に楽しめるような場所は、それを楽しむための酒肴を買う店が遠くて不便だという意味で、風流趣味を揶揄している。 ほとゝぎす鳴きつるあとにあきれたる後徳大寺の有明の顔(大田蜀山人) 百人一首の徳大寺実定の歌(ほととぎす鳴きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる)が元歌。 歌よみは下手こそよけれ天地の 動き出してたまるものかは(宿屋飯盛) 古今和歌集仮名序の「力をもいれずして天地を動かし…」をふまえた作。 世わたりに春の野に出て若菜つむ わが衣手の雪も恥かし 百人一首の光孝天皇の歌(君がため春の野に出でて若菜つむ わが衣手に雪は降りつつ)が元歌。 はたもとは今ぞ淋しさまさりけり 御金もとらず暮らすと思へば 享保の改革の際に詠まれたもので、旗本への給与が遅れたことを風刺している。 百人一首の源宗于の歌(山里は冬ぞ寂しさまさりける 人目も草も枯れぬと思へば)が元歌。 白河の清きに魚のすみかねて もとの濁りの田沼こひしき 寛政の改革の際に詠まれたもの。白河は松平定信の領地。定信の厳しい改革より、その前の田沼意次の多少裏のあった政治の方が良かったことを風刺している。大田南畝作という評判もあったが本人は否定した。別の寛政の改革批判の狂歌である「世の中に蚊ほどうるさきものはなし ぶんぶといふて夜も寝られず」も 「詠み人知らず」とされているが、大田南畝作の説が有力である。 泰平の眠りを覚ます上喜撰 たつた四杯で夜も眠れず 黒船来航の際に詠まれたもの。上喜撰とは緑茶の銘柄である「喜撰」の上物という意味であり、「上喜撰の茶を四杯飲んだだけだが(カフェインの作用により)夜眠れなくなる」という表向きの意味と、「わずか四杯(ときに船を1杯、2杯とも数える)の異国からの蒸気船(上喜撰)のために国内が騒乱し夜も眠れないでいる」という意味をかけて揶揄している。 名月を取ってくれろと泣く子かな それにつけても金の欲しさよ 下の句を「それにつけても金の欲しさよ」に付け合うことで、どんな風雅な句も狂歌の体に収斂させてしまう言葉遊びを「金欲し付合」という。江戸中期に流行した。 世の中に寝るほど楽はなかりけり浮世の馬鹿は起きて働く(読み人知らず) 道教、足るを知ること、等に通じる高尚なところもあり、怠け者の自己弁護のようなところもある有名な歌。
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