特別検察官の任命
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/14 03:37 UTC 版)
「ウイスキー汚職事件」の記事における「特別検察官の任命」の解説
グラント大統領は、元上院議員ジョン・B・ヘンダーソンを特別検察官に任命して、リングの事件を担当させた。上院議員であった頃のヘンダーソンは、最も強烈に政府を批判しており、グラントによる彼の任命は、ウイスキー・リングの捜査の一貫性を維持することが狙いだった。ヘンダーソンは大陪審を招集し、そこでバブコックがリングの元締めの一人であることが明らかにされた。このことを記した書簡を受け取ったグラントは、「罪を犯した者は誰ひとり逃すな (Let no guilty man escape)」と返信に記した。やがて、バブコックがマクドナルドに、セントルイスにおけるリングの運営について、暗号化した書簡を送っていたことが判明する。捜査の中で、マクドナルドは、バブコックに分け前の一部として 25,000ドルを支払い、さらに個人的に、1,000 ドルを葉巻の箱に入れて送ったと証言した。 バブコックに有罪判決が下された後、グラントは、バブコックは公開法廷ではなく、軍法会議で処断されるべきだと求めたが、大陪審はこの要求を却下した。グラントは、財務長官ブリストウに「罪を犯した者は誰ひとり逃すな」と指示していた命令を撤回した上で、予期されない形で、ウイスキー・リングに関わった者へのこれ以上の免責は与えないと命じたが、これはバブコックを護ろうとしているのではないかという憶測を呼んだ。この命令撤回は、表面上は有罪の者を逃さないという形をとっていたが、検察官は法廷での立証がより困難になった。リングの元締めたちを追及するためには、蒸留業者たちに免責を与えて証言させることが必要だったため、この命令は、ブリストウとグラントの間に対立をもたらした。リングのメンバーを追及していた特別検察官ヘンダーソンも、自ら裁判の中で、グラントがブリストウにの捜査に介入していると主張した。 この主張に怒ったグラントは、ヘンダーソンを特別検察官から解任した。グラントは、後任にジェームズ・ブロードヘッドを任命した。ブロードヘッドは有能な弁護士であったが、バブコックの一件の事実関係に十分通じていなかったし、他のリンクのメンバーについても同様だった。裁判では、グラント大統領の宣誓証書(英語版)が読み上げられ、そこにはバブコックがリングに関わっていることはいっさい承知していないと述べられていた。陪審団は、読み上げられた大統領の言葉を聞き、直ちにバブコックを全ての罪状について放免することとした。ブロードヘッドは、さらにウイスキー・リングの関わる全ての事件を取り下げた。マクドナルドとジョイスは、いくつかの裁判で有罪とされ、刑務所に送られた。1877年1月26日、グラント大統領は、マクドナルドに恩赦を与えた。
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