物価安定政策への批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/11 22:11 UTC 版)
「名目所得ターゲット」の記事における「物価安定政策への批判」の解説
「インフレターゲット」も参照 名目所得ターゲットの議論はインフレーションターゲットの問題点を指摘するところに端を発する。ミードは、物価の安定を総需要政策の目的にすることは極めて危険であろうと唱える。輸入物価の上昇や間接税の増税によって物価に上昇圧力がかかる場合では、物価の安定を維持しようとすれば名目賃金を下げざるをえないとしている。もちろん輸入物価の上昇や間接税増税の影響を除いた物価指数を物価安定政策の目安として使うことはできるが、その物価指標の安定化政策でも依然として危険であろうとミードは唱える。名目コストの増加が販売価格に反映されない場合、すなわちコスト増がそのまま販売価格増につながらない場合ではコストプッシュ型の物価上昇によって実質生産量と雇用は落ち込むとしている。実質賃金に対する労働需要の弾性値が高いと仮定すれば確かに完全雇用を達成する程度に企業主たちが労働者の名目賃金を低く設定することで事態はよくなるだろうとしている。その労働需要は長期的には弾性的だが、短期的には過去の例を見ても非弾性的である。その場合には全産業で失業が発生し、名目賃金の低下は労働者の賃金から企業収益への富の移転しかもたらさないとしている。 従って通貨当局はインフレ率ではなく名目所得をターゲットにすべきであるとミードは唱える。たとえば名目所得水準の年率5%成長を維持するように通貨当局が金融政策をとる。名目所得水準が緩やかに増加している状況では、将来的な労働需要の見通しなどの要因に応じて産業のそれぞれのセクターで賃金上昇の速度に違いはみられるものの、労働者の名目賃金が落ち込むことはないとしている。 また名目所得水準は物価水準よりも意義深い目標値であるとしている。それゆえにFRBなど中央銀行が将来の名目所得水準をターゲットにすることで、名目経済成長についての明確な意思表示が市場に伝わり、また交易条件の悪化に由来する負のショックにも柔軟に対応できるとトービンは論じる。
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