灌漑による悪影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 00:41 UTC 版)
灌漑は次のような問題を引き起こすことがある。 水利権争い 地下帯水層の枯渇 地盤沈下(例えば、ルイジアナ州ニューオーリンズ) 乾燥地での不適切な方法による灌漑は、土壌の塩類集積などをもたらし、農地を荒廃させるほか、自然環境にも致命的な被害を与えることがある。作物の生育にかろうじて必要なぶんだけ灌漑を行っていると、水分の地表からの蒸発によって塩類集積が起き、塩害が起きやすくなる。これはメソポタミア地方でしばしば文明の衰退をもたらしたし、アスワン・ハイ・ダムの建設によってエジプトでも深刻化しつつある。インドにおいても、灌漑技術の導入により劇的に農業生産物が増加する「緑の革命」がもたらされたが、近年になって地下から汲み上げられた塩類が、深刻な農業被害を引き起こしているという。これを防ぐにはろ過で予め塩分を除去し、塩分を流し去るような排水技法を採用する必要がある。点滴灌漑では、適当な間隔で若干水を多めに流すことで蓄積した塩分を流すという方法がよく使われる。 配布水量の均一性が保たれなかったり管理が不十分だと、水や農薬や肥料を浪費する過剰灌漑となり、水質汚染を招く可能性がある。 (過剰灌漑の結果)地下への排水によって地下水面が上昇し、塩害となることもある。 旧ソ連によるアラル海の水源であるアムダリヤ川(アム川)とシルダリヤ川(シル川)からの綿花栽培用の灌漑用水の強引な取水は、アラル海を著しく縮小させ、漁業を壊滅させた上、不毛の砂漠地帯を作り出してしまった(自然改造計画)。アラル海は今なお消滅の危機に晒されており、その悲惨さから「20世紀最大の環境破壊」と言われている。他にもアフリカのチャド湖が周辺諸国による大規模灌漑の影響もあって消滅の危機にある。
※この「灌漑による悪影響」の解説は、「灌漑」の解説の一部です。
「灌漑による悪影響」を含む「灌漑」の記事については、「灌漑」の概要を参照ください。
- 灌漑による悪影響のページへのリンク