海外のダムと環境事情
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/01 20:21 UTC 版)
幾つか例を挙げるとエジプト・ナイル川本川に1970年完成したアスワン・ハイ・ダムは長年流域を悩ませた水害とマラリアを撲滅することに成功、さらに安定した電力供給を実施したことによりエジプトの発展に貢献した。ところがダムによってナイル川の流砂サイクルが断絶し、下流に広がるナイル・デルタの形成に多大な影響を及ぼしたとの報告がある。実際ナイル・デルタの縮小が進んでおり、ダムとの因果関係が指摘されている。 また、今後の環境問題が憂慮されているダム事業として、中国雲南省のメコン川本川(中国では瀾滄江と呼ばれる)に現在建設が進められている小湾ダム(シャオワンダム)がある。堤高292.0m、総貯水容量約151億トンという世界屈指のダムであり、2013年に完成した。これは三峡ダム(長江)と同じく中国の国家プロジェクトである「西電東送」の一環として建設されており、認可出力420万kWの巨大水力発電所が稼動する予定である。だが、このダム建設によってメコン川下流への流砂サイクルの断絶による肥沃な土地の減少、メコン・デルタの縮小、流域の河岸侵食が懸念されている。中国はダム建設によるメコン川の水量安定をメリットとして強調している(小湾ダムには洪水調節機能も有している)が、ダム建設を現在見合わせているメコン川流域諸国で結成される「メコン川委員会」に加入しておらず、また詳細な情報公開を行っていない。このため将来的な環境への影響は未知数であり、こうした観点からも懸念する声がある。
※この「海外のダムと環境事情」の解説は、「ダムと環境」の解説の一部です。
「海外のダムと環境事情」を含む「ダムと環境」の記事については、「ダムと環境」の概要を参照ください。
- 海外のダムと環境事情のページへのリンク