毒蛇の謎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 15:37 UTC 版)
作中で、ロイロット博士はミルクを餌にして毒蛇を手なずけ、口笛の音で蛇を操っていたことになっている。しかし、実際にはミルクを餌とする蛇は確認されていないこと、蛇は耳が聞こえないため口笛の音で蛇を操ることは不可能であること、また実際の蛇は紐を伝って上り下りすることもできないことから、作中に登場する毒蛇は実在しない空想上の蛇であると読者たちの間では結論付けられている。また、博士は蛇を金庫の中に隠して飼っていたことになっているが、実際には蛇に限らず生きている動物を金庫の中に入れ扉を閉めると窒息死することは明らかであるため、この点も非科学的であると指摘されている。そもそも蛇は群れを作らず単独で生活する非社会的動物であり、人間に飼われていても犬や馬などの社会的動物と違って飼い主の指示や合図に従う性質はない。 ホームズは作中で問題の毒蛇を「Swamp Adder(沼の毒蛇)」と呼んでいるが、インドにはそのような名前で呼ばれている蛇は実在しない。作中では、問題の毒蛇はまだら模様で、頭の形はひし形であると表現されており、このような外見上の特徴は問題の毒蛇がクサリヘビ科の蛇であることを連想させるが、クサリヘビ科の蛇の毒は主に出血毒で、咬まれると傷口が大きく腫れ上がり、被害者は死亡するまでに数時間から数日にわたって激痛に苦しむのが通常である。ところが、ヘレンの証言によると、2年前にジュリアが死んだ時には遺体には何の症状も見出されず、さらにロイロット博士は蛇に咬まれてから10秒以内に死んだと作中でホームズが語っており、問題の蛇の毒は明らかにクサリヘビ科の蛇の毒と異なっている。このように、咬まれた際に外見上の症状が見られず、しかも死亡するまでの時間が短いという毒の特徴は、むしろコブラ科の蛇が持つ神経毒に近いと見ることもできるが、実際にはコブラ科の蛇に咬まれた場合でも被害者が死亡するまでに20分~1時間程度かかるのが通常であり、人間が咬まれてから10秒以内に死亡するような毒蛇は現実には確認されていない。 なお、ドイルは本作のほかにも短編「悪魔の足」の中で、実在しない空想上の有毒植物を殺人の道具として登場させている。
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