死亡率との相関
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 01:05 UTC 版)
ドッケリーの1993年の報告やポープの1995年の報告をまとめた新田の2009年の報告によれば、「ハーバード6都市研究」と呼ばれるコホート研究の結果、PM2.5の濃度と、全死亡および心疾患・肺疾患による死亡の相対リスクとの間で、有意な関連性が認められている。また、ポープらの1995年、2002年の報告と、クルースキらの2000年の報告をまとめた新田の2009年の報告によれば、アメリカがん学会の研究を利用しアメリカの50都市30万人を対象に1989年までの7年間(追跡調査では1998年まで)行われた解析調査で、PM2.5の濃度と、全死亡および心疾患・肺疾患・肺癌による死亡との間で、有意な関連性が認められている。アメリカではこれらの研究が明らかになったことを契機にPM2.5の環境基準が設定されるに至った。日本でもSPM濃度と肺癌による死亡との関連性を示唆する研究報告がある。 各種研究をまとめた2005年のWHOメタアナリシス報告によれば、PM10が10µg/m³増加した時の1日当たり死亡率は、呼吸器疾患によるものが1.3%(95%CI値 0.5-2.0%)、心血管疾患によるものが0.9%(同 0.5-1.3%)、全死因で0.6%(同 0.4-1.8%)、それぞれ上昇する。またアメリカがん学会の調査を利用したポープらの研究 ("ACS CPS II", 1979–1983) によれば同じくPM10が10µg/m³増加した時の長期的な死亡率は、心肺疾患で6%(95%CI値 2-10%)、全死因で4%(同 1-8%)、それぞれ上昇する。 粒子径の大小による健康影響の差異に関して、2008年の環境省の報告書では、PM2.5の方が調査が少なく統計的に有意である頻度が低かったものの、PM10とPM2.5共に死亡率(全死因)と正の関連があるとした。またその影響の推定値(増加濃度当たり死亡率過剰リスク)を、PM10においては濃度50µg/m³当たり約1~8%(複数都市調査では50µg/m³当たり約1.0~3.5%)、PM2.5においては濃度25µg/m³当たり約2~6%(複数都市調査では25µg/m³当たり約1.0~3.5%)、SPMにおいては濃度25µg/m³当たり約0.5~2%(呼吸器系死亡に限ると25µg/m³当たり約1~3%)とまとめている。 10 - 2.5µmの大きな粒子の健康影響については、PM10はPM2.5を包含するため、PM10ではなく"PM10-2.5"について調査が行われている。"PM10-2.5"についてもPM10やPM2.5と同様の結果を示す例が報告されているが、十分な調査が揃っていないため、"PM10-2.5"の大きな粒子が単独で健康影響を持つかどうか、持つとすればどの程度なのか結論を出していない。 どの程度の濃度範囲であれば安全かという閾値については知見が不足しているとされ、アメリカ環境保護庁の2004年と2005年の報告では、諸研究において観測される大気中の粒子状物質濃度の範囲では、濃度と死亡率の間に明確な閾値があるという証拠は示されないとした。
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