歴史:リースのメモとフィッシャーのメモ(1907)
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「リース=フィッシャーの定理」の記事における「歴史:リースのメモとフィッシャーのメモ(1907)」の解説
Riesz (1907, p. 616) のメモでは、次の結果が述べられていた(ただし記号 L2([a, b]) は1907年には用いられていなかったので、その点に関しては近年の記法に直してある)。 {φn } を L2([a, b]) 内のある正規直交系とし、{an } をある実数列とする。級数 ∑ a n 2 {\displaystyle \sum a_{n}^{2}} が収束するための必要十分条件は、すべての n に対して次を満たす函数 f が存在することである: ∫ a b f ( x ) φ n ( x ) d x = a n . {\displaystyle \int _{a}^{b}f(x)\varphi _{n}(x)\,\mathrm {d} x=a_{n}.} 今日においてこのリースの結果は、ヒルベルト空間内の直交ベクトルの級数に関する基本的な事実の特殊例と見なされる。 リースのメモは1907年の3月に公開された。同年の5月の Fischer (1907, p. 1023) のメモでは、L2([a, b]) 内のコーシー列は L2([a, b]) 内のある函数 f へ L2-ノルムに関して収束するという定理が(ほとんど近年と変わらない言葉で)明らかに示された。このメモで、コーシー列は「平均収束列」(sequences converging in the mean)と呼ばれ、L2([a, b]) は Ω と表されていた。また L2–ノルムにおける極限への収束は「ある函数への平均収束」(convergence in the mean towards a function)と呼ばれていた。次が、フランス語から翻訳された定理の内容となる: 定理 Ω に属するある函数列が平均収束するなら、その列の極限となる Ω 内のある函数 f が存在する。 フィッシャーは、系の直交性と L2 の完備性の恩恵を受け、リースの先行結果の証明に関する研究を続けることが出来た。 フィッシャーによる完備性の証明は直接的ではない。それは与えられたコーシー列内の函数 gn の不定積分 G n ( x ) = ∫ a x g n ( t ) d t {\displaystyle G_{n}(x)=\int _{a}^{x}g_{n}(t)\,\mathrm {d} t} が [a, b] 上一様にある函数 G に収束し、有界変動を伴い連続であるという事実に基づく。コーシー列に対する極限 g ∈ L2 の存在は、ルベーグの理論より G の微分定理を適用することで示される。リースは彼のメモにおいて同様の議論を行ったが、そこに L2 の完備性に関する言及はなかった。しかし彼の結果はこの方法で解釈できる可能性も含むものであった。彼は、二乗総和可能(square summable)な係数を持つ三角級数を項ごとに積分することで、有界変動を持つある連続函数 F に一様収束する級数を得ることに成功した。ほとんど至る所で定義される F の導函数 f は二乗総和可能で、フーリエ係数としてその与えられた係数を持つものであった。
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