機能不全の影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 20:29 UTC 版)
相同組換えが適切に行われない場合、減数分裂における細胞分裂の第一段階で染色体が誤った整列を行うことが多くある。これによって染色体の適切な分離が行われなくなり、染色体不分離(英語版)と呼ばれる。染色体不分離によって、精子や卵に含まれる染色体が多すぎたり少なすぎたりといった状態が引き起こされる。ダウン症候群は21番染色体の過剰コピーの存在によって引き起こされ、減数分裂時の相同組換えの不全によって生じる異常のうちの1つである。 相同組換えの欠陥は、ヒトでのがんの発生と強く関連付けられている。例えば、ブルーム症候群(英語版)、ウェルナー症候群、ロスムンド・トムソン症候群(英語版)は、相同組換えの調節に関与するRecQヘリカーゼ遺伝子(それぞれBLM(英語版)、WRN(英語版)、RECQL4(英語版))の機能不全によって引き起こされる。ブルーム症候群の患者の細胞ではBLMタンパク質の機能的コピーが存在せず、相同組換えの頻度が上昇する。BLM欠損マウスを用いた実験からは、変異による相同組換えの増加によって引き起こされたヘテロ接合性消失(英語版)のため、がんが生じていることが示唆されている。ヘテロ接合性消失は2つのアレルのうちの1つが失われることを意味する。失われたアレルがRbなどのがん抑制遺伝子のものである場合、ヘテロ接合性消失によってがんが引き起こされる可能性がある:1236。 相同組換えの頻度の低下によってDNA修復が非効率なものとなり:310、こちらでもがんが引き起こされる可能性がある。2つの類似したがん抑制遺伝子であるBRCA1とBRCA2の機能不全はこのケースであり、乳がんと卵巣がんのリスクの大幅な増大と関連付けられている。BRCA1とBRCA2を欠損した細胞では相同組換えの頻度の低下と電離放射線に対する感受性の増加がみられ、相同組換えの減少ががんに対する感受性の増加につながっていることが示唆される。BRCA2の唯一の既知の機能は相同組換えの開始の補助であるため、乳がんや卵巣がんの原因の理解には、相同組換えにおけるBRCA2の役割に関するより詳細な知見が重要であると考えられている。 BRCAの異常など、相同組換えに異常がみられる腫瘍は、HRD陽性(homologous recombination deficiency (HRD)-positive)と記載される。
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