極化形式とヒルベルト空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/05 14:20 UTC 版)
「バナッハ空間」の記事における「極化形式とヒルベルト空間」の解説
任意の内積には対応するノルムが付随し(ノルムと内積との対応は ǁvǁ² = (v,v) で与えられる)、内積に付随するノルムに関して完備な内積空間はヒルベルト空間と呼ばれるから、任意のヒルベルト空間は定義によりバナッハ空間であるが、逆は必ずしも真でない。バナッハ空間 V のノルム ǁ•ǁ が内積に付随する(従って V がヒルベルト空間になる)ための必要十分条件は、中線定理(平行四辺形法則): ‖ u + v ‖ 2 + ‖ u − v ‖ 2 = 2 ( ‖ u ‖ 2 + ‖ v ‖ 2 ) {\displaystyle \|u+v\|^{2}+\|u-v\|^{2}=2(\|u\|^{2}+\|v\|^{2})} を任意の u, v ∈ V に対して満たすことである。故に、例えば Rn がその上で定義される「任意の」ノルムに関してバナッハであるのと対照的に、ヒルベルトとなるのはユークリッドノルムに関してのみということになる。同様に無限次元の場合、例えばルベーグ空間 Lp は常にバナッハだがヒルベルトとなるのは p = 2 の場合に限る。 バナッハ空間のノルムが中線定理の等式を満たすとき、バナッハ空間をヒルベルトとする内積は偏極恒等式(極化形式)によって与えられる。V が実バナッハ空間のとき、偏極恒等式は ⟨ u , v ⟩ = 1 4 ( ‖ u + v ‖ 2 − ‖ u − v ‖ 2 ) {\displaystyle \langle u,v\rangle ={\frac {1}{4}}\,(\|u+v\|^{2}-\|u-v\|^{2})} で与えられる。一方 V が複素バナッハ空間のとき、偏極恒等式は(エルミート内積は第一変数に関して線型とする場合) ⟨ u , v ⟩ = 1 4 ( ‖ u + v ‖ 2 − ‖ u − v ‖ 2 + i ( ‖ u + i v ‖ 2 − ‖ u − i v ‖ 2 ) ) {\displaystyle \langle u,v\rangle ={\frac {1}{4}}\,(\|u+v\|^{2}-\|u-v\|^{2}+i(\|u+iv\|^{2}-\|u-iv\|^{2}))} となる。この条件の必要性は内積の性質から容易に従う。これが十分であること(即ち、平行四辺形法則から偏極恒等式の定める形式が実際に完備内積となることが出ること)を見るには、この形式が加法的であることを代数的に確認して、それから帰納的に整係数、有理係数上線型であることを示し、さらに任意の実数がある有理コーシー列の極限であることとノルムの完備性を使って実線型性を示せばよい。複素係数の場合には、実双線型性に加えてさらに一方の引数については虚数単位 i に対する線型性と他方の引数に関する共軛線型性とを持つことを確かめればよい。
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