梅雨の闇一灯の追うサスペンス
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季 語 |
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季 節 |
夏 |
出 典 |
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前 書 |
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評 言 |
丸山美沙夫の作品は自然豊な原風景の残るふるさとの四季の折々の景観と、そこに暮らす人々の心のふれあいが詠まれ心地よい。 掲出の作品は、平成二十年刊の作者の第三句集『樹氷林』より頂いた。自然豊かな里では梅雨の夜の闇は、都会とは違い一寸先も見えぬほど闇が深い。一灯が更に闇の濃さを強調して、その闇の底に何か潜んでいるのではなかろうかという恐怖心と猜疑心を巧みに表現している。この作品はいろいろな場面を読者に想像させてくれる。まさに短編ミステリー小説を彷彿させてくれる。 俳句は詠み手の手を離れると独り歩きするといわれるが、この作品を読んで感じたことは社会の闇のことである。一見白昼のごとくに見えている社会の事柄の中には、実は闇もあって、本当は虚であったということがある。例えば、ご存知の年金問題や食品の偽装問題、毒物混入冷凍餃子問題、冤罪などのように、誰かが灯を当てなければ一般大衆には真実が見えなかったものがある。一灯を当てることによって、その闇が明るく照らされ、闇の正体が浮きぼりとなってあからさまになる様は正にミステリーといっても過言ではない。 俳句は、その作品を読む人の境涯とその時折の社会を重ねることによって、心に潤いと楽しみを与えてくれる。 丸山美沙夫は1936年長野県生まれ。「道標」、「白炎」同人、「現代俳句協会」、「新俳句人連盟」会員。 |
評 者 |
野舘真佐志 |
備 考 |
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