東京電力への賠償請求における課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 02:18 UTC 版)
「成年後見制度」の記事における「東京電力への賠償請求における課題」の解説
認知症高齢者などの意思能力のない者、不足する者(いわゆる賠償弱者)が、福島第一原子力発電所事故に係る賠償請求をするには成年後見人を選任するしか方法がなく、賠償弱者の権利擁護を図るべき成年後見制度がかえって壁となり、賠償請求できない事態となっている。弁護士などの専門職が認知症高齢者の依頼を受け代理することは無権代理行為となるためできず、通常は家族等が無権代理行為で東電の請求書を作成しているが、身寄りのない認知症高齢者に代わって賠償請求するものはいない。 また、認知症高齢者などは度重なる避難生活に健常者よりストレスや不便を強いられることから原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)や裁判所に賠償金の増額を申し立てねばならないため、結局、成年後見人を選任しなければならない。しかしながら東京電力への賠償請求は、早くて2014年3月10日(またはダイレクトメールを通知した3年後の9月以降)に消滅時効となるため、それまでに成年後見人をつけ、賠償請求することは困難な状況となっていた。 2013年5月31日、東京電力は、福島第一原子力発電所の事故による精神的賠償で、避難区域に住んでいた要介護者及び各種障害者の賠償額を、早ければ6月中旬にも上積みする方針を示した。原発ADRでは、要介護者らの避難生活で受ける負担の重さを認め、東電の賠償額を上回る和解事例が増えており、東電は要介護者らの負担分を直接請求に反映させる必要に迫られた(『福島民友』2013年6月1日参照)。これにより成年後見人を選任せずとも原発事故の賠償弱者の権利擁護を図る道が開かれたが、今回露呈した成年後見制度そのものの根本的課題は残されたままとなった。
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