朧車とは? わかりやすく解説

朧車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/25 21:33 UTC 版)

鳥山石燕今昔百鬼拾遺』より「朧車」

朧車(おぼろぐるま)は、鳥山石燕による江戸時代の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』にある日本妖怪の一つで、牛車の妖怪[1]

概要

石燕の画図では、半透明の牛車の前面の、本来なら簾がかかっている場所に巨大な顔のある姿で描かれている[2]。解説文では、「むかし賀茂の大路をおぼろ夜に車のきしる音しけり。 出てみれば異形のもの也。 車争の遺恨にや。」とある[1]。「車争い」とは、平安時代に祭礼の場などで、貴族たちが牛車を見物しやすい場所に移動させようとした際に牛車同士が場所を取り合ったことをいう[1]。平安中期の物語『源氏物語』において、六条御息所が祭り見物の牛車の場所取り争いでに敗れ、その怨念が妖怪と化したという話がよく知られていることから、この話が朧車のもとになったという説がある[3]

中世日本の説話集『宇治拾遺物語』には、加茂祭り見物のためにつくられた桟敷屋という小屋に泊った男が怪異に出遭う話があり、これが朧車のイメージに繋がったとの説や[4]、その『宇治拾遺物語」を含め、百鬼夜行(夜間に様々な妖怪が列をなして闊歩すること)に類する話が多くの古典資料に見られることから、そのような百鬼夜行の類を石燕が「朧車」という妖怪として描いたとの説もある[1]。「朧車」の妖怪画は牛車の前面を顔が塞いでいるが、江戸中期の妖怪物語『稲生物怪録』には巨大な老婆の顔が戸口を塞ぐ場面があり、構図が共通しているとの指摘もある[4]

昭和平成以降の妖怪関連の文献においては、朧車とは車争いに敗れた貴族の遺恨が妖怪と化したものであり、京都加茂(現・木津川市)の大路で、朧夜に車の軋る音を耳にした人が家の外に飛び出して見ると、異形の妖怪・朧車がそこにいた、と解釈されている[5]

脚注

  1. ^ a b c d 村上 2005, pp. 75–76
  2. ^ 少年社・中村友紀夫・武田えり子 編『妖怪の本 異界の闇に蠢く百鬼夜行の伝説』学習研究社〈New sight mook〉、1999年、107頁。ISBN 978-4-05-602048-9 
  3. ^ 『日本の妖怪百科』 3巻、岩井宏實監修、河出書房新社、2000年、45頁。 ISBN 978-4-309-61383-3 
  4. ^ a b 倉本 2000, pp. 112–113
  5. ^ 水木しげる妖鬼化』 3巻、Softgarage、2004年(原著1999年)、30頁。 ISBN 978-4-86133-006-3 

参考文献

関連項目


朧車

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阿鬼羅」の記事における「朧車」の解説

車争い敗れた貴族遺恨妖怪化したもので確認されている最も古い「車」の妖怪自動車事故での死者怨念加わり百鬼夜行通行の邪魔をする悪霊となっている。中にはエネルギー源事故死者の魂が乗せられている。朧な存在で、後ろの顔を傷つけても倒せないため、正面から斬る必要がある第一次交通戦争の時よりは減っているが、現代でもまだ多い。

※この「朧車」の解説は、「阿鬼羅」の解説の一部です。
「朧車」を含む「阿鬼羅」の記事については、「阿鬼羅」の概要を参照ください。

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