有限次元の場合の性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/12/31 08:35 UTC 版)
「正規行列」も参照 有限次元の実または複素ヒルベルト空間(内積空間)H 上の正規作用素 T が部分空間 V を保つならば、T はその直交補空間 V⊥ も保つ(この主張は T が自己随伴ならば自明である)。 [証明]. PV を V の上への直交射影とすれば V⊥ の上への直交射影は 1H − PV である。T が V を保つことは (1H − PV)TPV = 0 または TPV = PVTPV で表されるという事実を用いれば、目的は X := PVT(1H − PV) = 0 を示すことに言い換えられる。(A, B) ↦ tr(AB∗) が H の自己準同型全体の成すベクトル空間上の内積となることから、tr(XX∗) = 0 を示せば十分である。そこでまずは XX∗ を直交射影で書きなおせば X X ∗ = P V T ( 1 H − P V ) 2 T ∗ P V = P V T ( 1 H − P V ) T ∗ P V = P V T T ∗ P V − P V T P V T ∗ P V {\displaystyle XX^{*}=P_{V}T({\boldsymbol {1}}_{H}-P_{V})^{2}T^{*}P_{V}=P_{V}T({\boldsymbol {1}}_{H}-P_{V})T^{*}P_{V}=P_{V}TT^{*}P_{V}-P_{V}TP_{V}T^{*}P_{V}} tr ( X X ∗ ) = tr ( P V T T ∗ P V − P V T P V T ∗ P V ) = tr ( P V T T ∗ P V ) − tr ( P V T P V T ∗ P V ) = tr ( P V 2 T T ∗ ) − tr ( P V 2 T P V T ∗ ) = tr ( P V T T ∗ ) − tr ( P V T P V T ∗ ) = tr ( P V T T ∗ ) − tr ( T P V T ∗ ) = tr ( P V T T ∗ ) − tr ( P V T ∗ T ) = tr ( P V ( T T ∗ − T ∗ T ) ) = 0 {\displaystyle {\begin{aligned}\operatorname {tr} (XX^{*})&=\operatorname {tr} \left(P_{V}TT^{*}P_{V}-P_{V}TP_{V}T^{*}P_{V}\right)\\&=\operatorname {tr} (P_{V}TT^{*}P_{V})-\operatorname {tr} (P_{V}TP_{V}T^{*}P_{V})\\&=\operatorname {tr} (P_{V}^{2}TT^{*})-\operatorname {tr} (P_{V}^{2}TP_{V}T^{*})\\&=\operatorname {tr} (P_{V}TT^{*})-\operatorname {tr} (P_{V}TP_{V}T^{*})\\&=\operatorname {tr} (P_{V}TT^{*})-\operatorname {tr} (TP_{V}T^{*})\\&=\operatorname {tr} (P_{V}TT^{*})-\operatorname {tr} (P_{V}T^{*}T)\\&=\operatorname {tr} (P_{V}(TT^{*}-T^{*}T))=0\end{aligned}}} を得る。 同じ論法が、無限次元ヒルベルト空間のコンパクト正規作用素に対しても、ヒルベルト・シュミット内積(英語版)を用いて通用する。しかし、一般の有界正規作用素に対しては、不変部分空間の直交補空間で不変とならないものが存在し得る。これはつまり、そのような部分空間は固有ベクトルで張ることはできないということを意味する。例えば両側シフト作用素(英語版)を考えれば、これは固有値を持たない。両側シフト作用素の不変部分空間はバーリングの定理(英語版)によって特徴づけられる。
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